第57話「さてと、作戦を立てようか」
…………魔王軍。
これは人間──とりわけギルド側の呼称である。
本来、魔物というのは、同じ種族同士ならともかく、他種族でのコミュニケーションというのはほぼ行われていない。
つまり、同種族以外は徒党を組まないのだ。
ゴブリンはゴブリンで集落を作るし、
リザードマンはリザードマン同士でしか群れを作らない。
だが、そんな魔物の中でも、稀に特異な個体が現れることがある。
それがラージリザードマンの変異種であった、ニャロウ・カンソーのような『四天王』───いわゆる
そして、稀にではあるが四天王のような強力な魔物がわく地域では、一定の周期に魔物の氾濫が起きることがある。
……その勢いは凄まじく、適切に対処しなければ村や町が滅ぼされることも珍しくはなかった。
──それが
ちなみに、ネームドモンスターには、ほかにも南の大陸に生息する魔炎竜といった特殊個体がいるが、それらの特殊なモンスターを人間側の呼称で『四天王』と呼んでいるだけである。
つまり、よほど人間に詳しくなければ、自分たちが何と呼ばれているかなど、そもそも知らないだろう。
きっと、グエンが倒したニャロウ・カンソーも自分が魔王軍四天王と呼ばれていたことは知らなかったかもしれない。
それはさておき、
魔物の大群『魔王軍』であるが、
本来群れを形成しない魔物がなぜか軍団を組み、大挙して押し寄せるのか。未だにそのメカニズムは解明されていない。
だが、一部の研究者の間では、それを操る個体がいるのでは──と、昔から推察されており、嘘か誠か『魔王』と呼ばれる存在が魔物を指揮しているとまことしやかに囁かれている。
そして、今回辺境の町を襲わんとしているのも、魔物の群れの複合体で、まさしく
さてさて、現在の状況は───??
視点を再びグエンたちに戻すと、そこには複数の人影。
魔王軍の接近経路上に陣地を構えた冒険者グループの───。
便宜上、リズ班としようか。
編成は、SSSランクのリズ。
そして、相棒にグエン。預りとしてシェイラがいる三人だけの部隊だ。
一応、連絡員として低ランクの冒険者が数名あてられているが、戦力にはならない。
「なるほどねー。予想通りだけど、リザードマン系が多いのね?」
「あぁ、ほとんどがそうだ。多分。もともとこの辺に棲息していた連中じゃないかな?」
ふむ……。
リズがふと考えこむ。
「───なら、考えられる原因は一つ。……この辺を縄張りにしていたニャロウ・カンソーが死んだことで、リザードマン系の指揮統率者がいなくなったことが、今回の
「……ま、まじかよ」
つまり、俺のせいか? そう、グエンは悩み頭を抱えた。
「──気にすることはないわ。そもそもがギルドの出した依頼だし。第一アタシの思い付きだからねー。それよりも……」
リズはグエンの苦悩を一蹴しあっけらかんと笑う。
そして、
「それよりも──」と、地面に作った砂盤を示す。
「みて。ここと、ここ───の一帯は湿地帯。そして、ここは丈の長い草で覆われたブッシュよ」
うん?…………うん。
リズが指し示す砂盤を見て、ふんふんと頷くグエン。
「で、それがなんだ? 何かわかったのか?」
「最後まで聞きなさいって。──で、ここが旧街道。比較的広くとられているのがわかる?」
砂盤には太い道が走っている。
それがどうやら街道らしい。
「あ? あぁ……見ればわかるけど、」
「なら簡単──」
……………………は?
つつー……と、リズの形のよい指が砂盤の上を踊る。
そして、街道をなぞり────居並ぶ魔物の軍勢の「駒」をなぎ倒していった。
ガンガン、パタパタと……。
「──何が何でも、街道に誘い込んで、…………それから、一気に
ぱ、はぃぃい?
「ど、どうやって?」
グエンには何もわからぬまま、リズは断言する。
「──────『餌』に決まってるじゃない」
ニコリと笑ったリズの目線の先には、きょとんとした顔のシェイラ。
そして……。
いや、
「────俺が聞きたいのは、
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