第52話「なんだと……! ぶっ殺すぞクソガキぃぃぃいい!」
「ひぃぃいいい!!」
「ぶっ殺すぞ!! クソガキぃぃぃいい!!!」
あーもう!!
なーーーーんか、変だと思ったんだよ!!
靴下にはやたらと穴空くし!!
手袋はいつもなくなるし!!
便所が大爆発したのも────「全部お前かぁぁぁああああああ!!」
うがーーーーーーーーーーー!!
怒り心頭のグエン。
これにはさすがにリズも「あちゃー」といった表情。
正直なのはいいけど、正直すぎて怒りのボルテージがMAXを超過して戻ってきませんよ?!
「あーうー……シェイラ、それはやりすぎ。ごめん、庇えないわー」
「庇うな!! ぶっ殺してやるこのガキぃぃい!!」
スコップ片手に脳天勝ち割ってやると、グエンがギャーギャーと、
「ひぃぃぃいい!! ごめんなさい、ごめんなさい! ごめんなさい!!」
「ごめんで済んだら衛兵はいらねーーーーんだよーーーー!!」
ムッキーーーーーーー!!
「一個ずつ仕返ししてやらぁぁああ!! まずは便所大爆発じゃー!!」
「あーあーあーあーあーあー。落ち着きなさいって!!」
これが落ち着けるか!!!
便所が大爆発した時の光景を知らんからこんなことをが言えるんだよッッ!!!
つーーーーか、
「全部ガキのいたずらか、この野郎ーーーーーーーー!!」
ぶっころ!!
絶対ぶっ殺ッ!!
「ごめんなさーーーーーーーい!!」
グエンブチ切れで、しばらく収拾がつかなかったとかなんとか……。
そして、小一時間。
「くっそー……。カエルとかさー、不幸の手紙とかさー……お前は子供かッ」
「子供よ!」
リズの的確な突っ込み。
「──あ、子供か……」
はい、そうでした。
「くそ……。ち──」
「ひっく、ひっく……ごめんなさい」
あーもう。マジで腹立つ。
つーか、ご飯にゴミとか知らんかったぞ……?!
え、俺ゴミ食ってたことあるの?!
「──くっそー……知らん方がいいこともあったわ」
おえ、吐きそう……。
コイツの悪戯は度が過ぎてるから、ゴミでもいったい何を入れたことやら……おえええ。
(詳しくは聞かないほうがよさそうだ──それよりも、)
「──……で、それだけか?」
「ううん……。僕、グエンを見捨てた。帰った後も、グエンを貶める手伝いをした。言われたからとか、怖かったからとか、言い訳しないよ──僕が、僕が……」
ご、ごめんなさい。
「ち。……わかっててやったんだな」
「うん……」
「グエン……──」
はぁ。
「わーってるよ」
ポンッ。とグエンはシェイラの頭に手を置くと、ポンポンと軽くなぜる。
「あ──」
ゴンッ!!
「あぅ!!」
いい音をさせて、シェイラの頭に拳骨を落とす。
「悪いことをしたら、大人に怒られるもんだ。……わかったな?」
「う、あう……ごめんなさい」
シェイラは涙ぐんで頭をスリスリとさする。
もっとも、音は派手だが、そこまで強くは殴ってない。
そもそも、グエンの攻撃力はゴニョゴニョ……。
「水に流しはしねぇし、許しもしない。だけど、謝罪は聞いてやる────今はそれだけだ」
「うん……うん……」
ポロポロと涙を流すシェイラ。
だが、グエンは慰めるでもなく、許すでもなく。もはや、声をかけることもなくシェイラから離れた。
あとは時間と本人に任せる。
もう、許せるという段階はとっくに過ぎているのだ────だから、これがグエンにできる最大の譲歩だ。
そのグエンを見てリズは肩をすくめるだけ。
軽くシェイラの頭をポンッと優しくなでると、彼女も去っていく。
「あッ……」
目の前には可愛らしいデザインの財布が一つ。
金貨には手が付けられていない。
「…………そうだよね」
謝っただけで許してもらおうだなんて虫が良すぎた。
シェイラはそう理解した。
昔も、こうして失敗して──学園を放逐された。
結局同じ失敗をした……。
だけど、
「────もう、失敗しないよ。言い訳もしない……」
ノッシノッシと歩いていくグエンの背中にペコッと頭を下げる。
本当なら殺されてもおかしくないくらいなのに、拳骨一個で解放してくれたグエンに感謝を──。
いつか、いつか……いつか許してくれるなら。
その時はリズのように──。
「一緒に戦うよ──。今度は逃げずに……仲間として」
涙を拭い、後悔を胸に、たくましく歩いていくグエンを見ながら────……。
「ティナさん!! ごめんなさーーーーーーい!! 弁償しますぅぅううう!!」
と、ジャンピング土下座をしてるグエンをみて、ズルリとずっこけつつ……。
「あるぇ?」
一瞬でも、グエンがカッコよく見えたシェイラであったが、どうやら目の錯覚だったようだ。
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