第48話「ダークエルフは、ギルドを切る!(前編)」
~少し時は遡って、
グエンと居場所をスイッチしたあとのリズ~
※ ※
「こっちは任せなさい。グエン──……そいつらはアンタの手でケリをつけるのよッ!」
そう言い放ったリズは、テーブルの上に立ったまま居並ぶ連中を睥睨する。
(さて、そうは言ったものの……)
ざっと見ただけで30人ほど。
死角にいる連中を含めれば約5、60人といったところだ。
「ひゅーひゅー! お嬢ちゃ~ん。そっからおりてきなぁ!」
「ひゃははっはは! 金貨500枚相当の首だぜぇ!」
「その前にみんなで楽しもうぜぇぇ!」
ぎゃはははははははははははは!
「ふん……。くっだらない連中」
勝ち目の有無を考えずに、金と女に釣られて集まったクズども。
その相手が誰かも知らずに暢気なものだ。
「──……一応聞いとくけど、アタシはギルド本部から正式に委託された『監察官』よ。その意味わかる?」
ま、無駄だろうけど……。
しかし、それなりに効果があったのかシーーーーーン、と静まり返る。
(あら、意外──────……)
ぷっ。
ぶははははは──!
「「「ぎゃはははははははははははは!」」」
「うははははははは! バーカ。お前バーーカ!! 脳みそは、パーか? はっはっは」
ゲラゲラと笑い転げる冒険者連中と、それを先導するギルドマスター。
なるほど、意外でもなんでもなかった。
うん、予想通りの反応。
「今さら、剣を引くわけねーーーだろうが!! 『監察』なら知っとけよ。ここいらじゃ、間抜けな冒険者や、ソロの女冒険者がやたらと行方不明になってる事実によぉ」
「「「うひゃはははははははははは!」」」
あー……そういうこと。
確かに、『光の戦士』の調査ついでに、いろいろ頼まれてたわね。
ティナからも内部告発もあったし────なるほど、こいつらが哀れな犠牲者を食い物にしていたってわけね……。はい、報告報告。
「貴重な情報どーも」
どーりでここはギルド本部の評判が悪いわけだ。
ティナのような優秀なギルド職員のおかげで、
年功序列と縦割りの組織ゆえの弊害がこういうところに出てくるのだ。
「──ま、だからアタシみたいなのが雇われるわけだけどね」
冒険者ギルドという巨大組織は、内外に多数の問題を抱えている。
賄賂や不正は横行するし、重要ポストもそうした不正でつく連中が後を絶たない。
だから、良識ある上層部の一部が監察局をつくって締め付けているのだ。
それも効果があるかは微妙だけど。
「けッ!! いい気になっていられるのも今のうちだぞ! グエンごとき、マナックがすぐに仕留める。そしたら、テメェはSSランクと、辺境で鍛えたAランクBランクの冒険者を多数相手にするんだぞ! は! 今のうちに降参した方がいいんじゃないのか?」
「あーそう? 降参したら許してくれるのかしら?」
聞くのも野暮だけどね。
「はは! こいつ等のお相手をした後は、俺のペットとして生かしておいてやる、どうだ!」
「あははー。ありがたくって涙が出るわー」
はっはっはー。
「──で、御託は終わり? 口だけでAランクやBランクになったわけじゃないでしょ?」
そう。
ここは腐っても辺境だ。
すぐ近くにはニャロウ・カンソーのような強力なモンスターがうろつく地域。
ただの新人が生き残れる環境ではない。
だから、ここには強力な戦力が集まっているわけで────……。
「んっだこらああああ!!」
「ぶっ殺すぞガキぃぃい!」
「グッチャグチャに挽肉にして晩飯にしてやらぁぁあ!」
おーおーおー……こうでなくっちゃあ!!
「ふふふふ……。結構──ならばかかってきなさい。アタシが欲しいんでしょー」
首でも、
肉でも、
何でも、
「欲しけりゃ、力づくで奪うことね!!」
しゃおらぁぁあああああああああああ!!
「しねぇっぇえええ!! ダーーーーークエルフぅぅうう!!」
言い切るや否や、血気盛んな冒険者が床を蹴って飛び上がる。
両の手に持った大剣を振りかぶって────叩きつけたッ!!
バッカーーーーーーーン!!
粉々に砕けるテーブル。
「おっそーーーーーい」
そこにリズの姿はすでになく、舞い上がるかけらの中にいた。
フワリと舞い上がり、悠々とした動作で大剣に一撃を躱していた。
だが、
「は! そう来ると思ったぜ、」
サッと、手で合図するギルドマスター。
どうやら、すでにこの機会を狙っていたようだ。
なるほど。先ほどの剣士の一撃は連携攻撃の一つで────……。
「──
空を舞ったリズを見てギルドマスターがニヤリと笑う──……!
「打てぇぇええええ!」
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