第34話「さーて! ランクアップとか冗談だよね?」
ら、ランク昇格???
「な、何を言ってんだよ、リズ」
「何って、客観的結果に基づいた、しかるべき事実を話してるだけだけど?」
いやいやいやいやいや。
「り、リズ。君も知ってると思うけど、『光の戦士』じゃ、俺はただのパシリだったんだぜ? 普段は雑用と後方支援ばかりで──」
「うん。そうだね──……だから?」
だ、だからって……。
────え? マジな話?
「……グエン、忘れたの? 何のために四天王の領域まで行って、ニャロウ・カンソーを倒そうとしてたのよ」
「な、なにってそりゃ……」
『光の戦士』念願のSSSランク昇格のため………………って、えッ?!
ええええ?!
「そ。『光の戦士』のランクアップには実績が必要で、ニャロウ・カンソーを倒せば晴れてSSSランク昇格。………………で、倒したのは誰?」
──────あ。
「…………いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!」
ないないないないないないないないない!!
「無理無理無理!! 俺じゃ無理だって……!」
た、たしかにニャロウ・カンソーは倒したけど……。
って、
──た、倒したんだよね、俺が?
「
大して変わらないわよー。とリズは軽い調子。
「いやいや。お、おおおお、俺なんかがSSSとか、無理だって!」
「そう?……なら、辞退する? まぁ、辞退するとかそういうものじゃないけど──」
む……。
「いや、むぅ……。辞退は────ど、どうだろう」
グエンとて冒険者だ。
たとえパシリ扱いされていても、初心は忘れてはいない。
冒険者の頂点に君臨し、自分の力を世に知らしめたいという気持ちもかつてはあったのだ。
そして、その頂点がまさに手に届くところに──。
「まぁ、しばらくじっくり考えときなさいよ。今日のところは、ギルドマスターが不在で、最終決定権を下す人がいないけど、……多分、問題なくSSSランクの上申は通ると思うわよ」
あ、ギルドマスター不在なのか。
どうりであの騒ぎにも顔を出さないわけだ。
「俺がSSSランク……。まさか、な」
──パシリの俺がSSSランク……。
グエンは、立ち止まるとギルドの天井を仰ぎ、一人物思いにふける。
かつて、『光の戦士』を盛り上げ、必ず成り上がると決心して、ここまで来た──。
だけど、だんだん実力差のあるメンバーに追い抜かれ、いつしかただの古株なだけのお荷物要員に成り下がっていた。
そのグエンが────。
「………………SSSランクか。信じらんねぇな」
ボロボロになった手を開く。
格好だってみすぼらしい。使い古しの軽鎧に、武器は雑用にも使える折り畳み式のスコップが一つっきり。
これでSSSランク。
「くっくっくっ……」
「ど、どうしたの?」
突然、笑いだしたグエンをリズが訝しがる。
「はっはっは。だって、見ろよ俺のこの格好──」
ボロボロで小汚いオッサン。
武器も防具もみすぼらしい。
どこからどう見ても────。
「ただのオッサンね」
「だろ?」
少なくとも、世間一般にいうようなSSSランク候補の冒険者にはみえないだろう。
自嘲気味に笑うグエン。
自分の姿と、成し遂げたことがあまりにも……。
「───ん。んー。だけど、か……カッコよかったわよ、グエン」
え?
「な、なに? なんて言った今?」
リズが褐色の肌を朱に染めて恥ずかしげに顔を伏せる。
「な、なんでもない──」
「え、おい。そりゃないだろ──」
がるるるるるるるるる!
「ちょっと、グエンさん! 女の子に馴れ馴れしくないですか!」
あ、コイツがいるの忘れてた。
リズの腕を手に取り、威嚇するちっこいギルド職員のティナ。
「馴れ馴れしいって、リズと俺は仲間で、そしてパーティメンバーだぞ────っていうか、リズは
パカーーーーーーン!! ×2
「「女の子に歳の話するなッ!」」
攻撃力のある女子二人にすっ飛ばされてギルドの中を転げていくグエン。
「へぶぉぉおおおおお!!」
ゴロンゴロンと大げさなくらい転がるグエンに、リズとティナが「「あ……」」やり過ぎちゃった? という顔をして見合わせている。
いや、やりすぎっていうかね……。
「お、俺のステータスは敏捷極振りなんだよ」
げふっ……。
だからね、悲しいけど、これ防御力
「む、無念────がっくーーーーーん」
そして、グエンの意識があえて闇の中へ……。
ちーーーーーーん♪
SSランクのグエン・タック。
ランク昇格を前にして、ギルド内で撲殺され───「れて、ねえっつの!!」
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