第33話「さーて! 晴れ晴れした気分だぜ」
は! いい気味だ!
倒れてピクピクしているマナック達。
そのまま、みっともなく衛兵に引き摺られていく様子を清々する思いで見下ろすグエン。
「無罪だー!」とか「私を誰だと思ってんのよー」とか「覚えてろよー!」と、まぁ騒々しく退場するマナックたち。
ダッサイ格好の3馬鹿を見ることができて、グエンはほんの少し留飲を下げた。
本音で言えば、自分の手でぶっ飛ばしてやりたいところではあるが、ま───これはこれでいいかもしれない。
「ふぅ……。まったく、とんでもない連中だったわね。ねー、リズさん」
「あーうん……。そーねー、アタシが
まるで虫けらを見るような目つきのティナに、まったくー……と疲れた様子で肩をひそめるリズ。
「ん?
「いえ、こっちの話──さ、もう、ほっときましょ」
「はーい、リズさぁん♪」
ティナのやつは、今は先ほどまでの険しい表情を消し去り、リズに肩を寄せている。
なんか、ハートマークが見えるんだけど気のせいかな?
っていうか、
……君。百合なのかい?
ジトっとした目で、ティナの後姿を見ていたグエンであったが、慌ててその後を追う。
ギルドの外では、未だにギャーギャーと騒がしい3馬鹿が、暴れに暴れていて、その近くをオロオロとしたシェイラの姿が見えた。
シェイラも、ガチムチの衛兵にガッシリと肩を押さえられて身動きできないようだ。
チラリとだけ、彼女と視線があう。
まるで、グエンに助けを求めるように───。
「ちょっとティナさん。……いいんですか? あいつ等。あのままじゃ、どうせ、なんとかして無理筋通しますよ」
マナック達のことをそれなりに知っているグエンがティナに耳打ちする。
腐ってもここまでSSランクパーティを引っ張ってきたマナックだ。
こういう修羅場がなかったわけでもない。
当然ながら、
こんなときの奥の手や対処方法も一つや二つではないはずだ。
「ふん! 好きにすればいいんですよ。ギルドもこんな不正に甘い顔をしません。それに──」
……それに?
「───あ、いえ。なんでもありません。と、とりあえず、今はギルドを信用してください」
「そこは信用しているけど──」
気になることといえば、『光の戦士』の名が地に落ちることだけ────。
「まぁ、それも仕方ないか……」
グエンが、パーティ『光の戦士』に拘ったばかりにこんな面倒なことになっているのだ。
本当ならもっと早くこのパーティを出るべきだったのだろう。
「グエン。アンタ、大丈夫?」
リズがグエンを気遣うように顔を覗き込む。
「あぁ、問題ない」
……なくはないけどね。
「そう……? 無理はしないでね。
「つ、つらいよね?」と、リズが聞くも。
「いや、全~然」
ここだけは即答できる。
「そ、そう? なんだか辛そうな顔をしていたから……」
自分も随分ひどい目にあったというのに、リズはグエンを気遣ってくれた。
最初は取っつきづらい雰囲気だったリズだが、今では随分と気やすい関係だ。
───なによりも、この子はいい子だ。
「ありがとう。……ちょっと、パーティの名前がね、地に落ちるな──と」
「……あぁ。そういえば『光の戦士』は、もとはグエンのパーティだっけ」
ん? 元は──というわけではないけど。初期メンバーというか、一番の古株というか、愛着のあるパーティだったしな。
いや……それにしても詳しいな。
「よく知ってるな?…………あ、そういえばさっきティナさんは何て言おうとしてたんだ?」
そういえば、リズのことをよく知っている風だし、どういう関係だろう。
まさか、
「んーん。気にしないでいいわ。結果として、丸く収まりそうだから」
ひらひらと手を振ってグエンの追及をかわすリズ。
釈然としないものを感じたがグエンはそれ以上追及しないことにして、
「全然、丸くはないんだけどな……」
結局大事に思っていたパーティは早晩解散しそうだし、解散しなくとも、ギルドか衛兵によって解体されるかもしれない。
罪が軽くなっても、パーティで起こった不祥事だ。広いようで狭い冒険者界隈。今回の話は瞬く間に広がるだろう。
もう、『光の戦士』として活動はできない。
脱退もしたしな……。
「はぁ……。再就職しなきゃなー」
「ふふふ。いいじゃない、グエン────」
「ん?」
なにが??
疑問を口にしようとしたとき、
クルリと振り返ってニコリとほほ笑むリズ。
「アンタさぁ、たぶん、今回の一件でランク昇格よ」
「は………………?」
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