第14話「ソニック! 限界を超えろッ!(後編)」
警鐘をならし続けるステータス画面に、
「やかましぃぁああああああ!!」
と、絶叫を返すグエン。
もし、敏捷をあげることで、少しでもニャロウ・カンソーを倒す可能性があれば、と。
その一点にだけ集中する。
「無理、よ……。逃げて。グエン!!」
わざと力を緩めては、獲物の拘束をくり返すにニャロウ・カンソー。
ミリミリとリズの骨が軋む音を聞きながらグエンは歯噛みする。
一刻も速く彼女を救出したい!
───だけど!!!
だが、悲しいかな。
グエンの攻撃力は低すぎて、未だニャロウ・カンソーの装甲を貫くに至らないのだけはわかる!
だから、グエンはその先に至るしかないのだ。
なんとしてでも、その邪悪な顔に一撃を食らわしてリズを救う! と、グエンはステータス画面の敏捷「+」を叩き続けた。
「一撃が限界だ……」
グエンは失血と怪我からくる体調不良に目を眩ませながらも、体に力を籠める。
すでに、立っているのもやっと。
幸い、アンチポイズムの効果が持続しているため、毒におかされないとこだけが救いではあったが、そんなものは気休め程度だろう。
そして、グエンに放てるのは一撃が限界だっだ! だから、確実に仕留められるとわかるまで、9999をさらに、さらに上書きする。
今のままでは、せいぜいが奴に大ダメージを与える程度。
だが、それくらいでくたばる化け物ではないのは明白。
(頼む! 俺に力をくれッ)
パシリ生活でグエンをたすけてくれた敏捷のステータス。
その恩恵を感謝しつつも、さらに上を目指したい!
でも───動かない!!
動かない!!
動かない!!!!!!!
「がぁぁあああああああああああ!!」
動けぇぇぇぇえ!!!
残りステータスを叩き込んで、ニャロウ・カンソーにぶちかましてやるんだよぉぉおお!!
「おらぁぁぁああああああ!!」
敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷敏捷
「+」「+」「+」「+」「+」「+」「+」「+」「+」「+」
音速で連打し続けるグエン!
いくら敏捷が9999でも、
音速の称号を手に入れても、
いくら早く、
速く、
疾く
はやくなってもぉぉぉおお!!
今、
そう、今!!
───今、この瞬間!
ここでリズを救えなければ、
「───何の意味もないッッッ!!」
だから、
「越えろッ」
超えろッ!!
最速を越えろッッ!!
音を越えて、その先へ!!
音速の先の、その先の世界へ──────!!
敏捷9999の先へと、
残るステータスポイントとともに、その先に至れと───!
「ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
『ステーーーーーータスの上げ、げげげんんn……
ピシリッと、何かが歪む音。
ニャロウ・カンソーがあざ笑い、
「がはッ…………ぐ、えン───」
リズが死ぬ、その一瞬先……。
グエンが「限界をこえたい」と願ったその刹那の先……。
ピシッ、ピシピシ───……。
ステータス画面がひび割れていき、その姿が変わらんとする!
亜音速を、
音速を超越し──────!!
そして、超音速を!!
いや、足りない。
音じゃ、足りないッ。
だから、音よりも早く───……!
早く、
速く、
疾くッッ!
「───音をぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」
動かないはずがないと、確信と妄信に似た思いでスタータス画面を叩き続けるグエン。
9999の先へと、残るステータスポイントとともにその先に至れと───!!
越えろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!
「……ぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ががががががががががががががががががががががが!!
がががががががががががががががががががががッッ!!
『ステー……、ステ───。ス………………
がががががががががががががががががががががッッ!!
カッ────────────!!!
ステータス画面が一層輝き、何かが……。
ピシ…………パリーーーーーン。
────砕けるッッ!!
「な、なに?!」
まるで、何かを固定していたようなくびきが弾ける音とともに、ステータス画面がグルリと回転した。
そして、
「ぐぁ!!」
バチリッ! とステータス画面に光が紫電が迸り、感電したようにグエンの指が、一瞬だけ弾かれる。
そして、クルクルとステータス画面が高速回転したかと思うと……。
チカチカチカ……! と、ステータス画面の「称号」の項目が点滅した。
「こ、この現象は……」
さっきと同じ、新称号が付与される予兆!?
「ま、また───……?!」
またなのか?!
困惑するグエンをよそに、
瞬く、ステータス画面ッッ!
『ス、ススススス、ステータス……敏捷9999確認。さらなる上昇の意志確認』
『総走行距離───約1万km。瞬間速度、約350/s───音速の超越を確認』
ッッッ─────────!!
新称号付与───!!
薄れゆく意識の中で、光り輝くステータス画面ッッ!
称号「
「俺の…………速度は────」
ゲフッ……。
新称号を確かめるその瞬間。
失血と激痛と『再振りの丸薬』の影響でグエンの視界が濁る。
そして意識も───……。
「させ、るか……」
意識を手放す前に、グエンは一歩踏み出すことにする。
最初で、最後になる、敏捷極振り後の『音速』の攻撃ッッ!!
音速時の対物理防御無限で、
『攻撃力=1/2×筋力×敏捷の2乗』のそれをブチかましてやるのだッッ!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
(どうせ、やられるなら。せめて最後に一糸───)
ダンッッ!!
地面を蹴り──リズの手をつかんで引き寄せると、奴が突き立てた巨大な槍ごとニャロウ・カンソーをーーーーーーーーーー。
こなくそ!!!
「ちッくしょぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
⇒新称号「
「俺のパンチは──────…………」
ドカァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
すさまじい爆発音とともに、グエンは意識を失った…………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます