第27話「よぅ……! どーなってんだ、あ?!」

「ま、まままままま、マジかよ?!」

「ぐ、ぐぐぐぐぐぐ、グエン───さん?!」

「げ?! な、なんで生きてんだテメェ?!」


 驚愕の三人。



 ざわざわ


 ざわざわ



 好奇の眼差しで、ギルド中の冒険者が集まる。

 そして、


「ちょ、ちょっとちょっと! これは、何の騒ぎですか?!」


 喧騒を伴ってVIPスペースに乱入してきた二人に驚いて、ギルド職員が立ち上がる。


「よぉ、マナック。それにレジーナに、アンバス」

「ただいま。報告には、遅れたかしら?」


 周囲の喧騒など知らぬとばかりに、グエン達はパーティションで区切られた応接スペースに乗り込んだ。

 そこには、当然ギルドの職員もいて───。


「え、う、嘘……?」


 リズとグエン。とくにリズのその顔を見た途端ギルド職員は硬直した。


 なにせ、そのこいたのは、たった今死んだと聞かされていたグエン達だ。

 その後ろには、すでに冒険者の人だかりができており、シェイラも泣きそうな顔でションボリとついてきている。

「え? え? え?」

 そして、事態についていけないギルド職員は顔面中に「?」をつけて、グエン達とマナック達の顔を何度も見比べている。


「り、リズ……さん?──う、うそ?!…………なんで? だって、さっき、」

「――あ。ティナ」


 リズがようやくギルド職員に気づく。

 そして、その姿を見て、声を聞いた途端、ギルド職員のティナは手に持っていた書類をバサリと落とす──。


 そして、まるで信じられないものを見るように目を見開くと。



「り、リズ…………さん?」

「うん、ただいま」

 


 辺境の冒険者ギルドの紅一点。

 美人受付嬢のティナは、ポロリと涙を一滴流したかと思うと、「リズさぁん!」猛烈な勢いでリズの小さな胸に飛び込みワンワンと泣き始めた。


「リズさん! リズさん! リズさぁぁぁああん!!」


 ドズゥゥン……! と、親の仇にドスをぶっさすような勢いでティナが特攻する。

 それをモロに喰らったリズが「げふぅ!」と、大げさなくらいに仰け反る。

 だが、さすがはリズ。なんとかかんとか、かろうじて彼女を支えていた。


「お、おっふ。中身が出る──。って、あー……わー……。ティナ落ち着いて……」


 顔面を鼻水と涎だらけにして泣きじゃくるティナ。

 それがリズの装備にデローンと付着して、彼女の顔が引きつっている。


「うっく、ひっく……。だってだってー! マナックさんが帰還して早々、リズさんたちが死んだって……。リズさんのミス・・・・・・・グエンの裏切り・・・・・・・でパーティは壊滅したって。そう言っててぇぇえええ!!」



 ……あ?

 いま、なんつった??


 う、

「裏切りだぁぁっ??」



 チラっとシェイラを見ると、その視線をうけた彼女がビクリと震える。


(なるほど、そういうシナリオか……)


 視線を戻し、マナック達をみおろすと───

「「「………………」」」

 マナック達は一斉に顔を背ける。


    「おい……」


 グエンの低い声に目をそらしまくって、不自然な挙動をする三人。

 どうやら、二の句が継げないようだ。


「……うぅぅ。ぐすん。でも、よがっだーーーー!! いぎででぐででよがっだーーー!!」


 ぐりぐりと頭をこすりつけ、ワンワンと大声でなく受付嬢――ティナにリズが困った顔をしている。


「え~っと、助けて?」


 なんで疑問形やねん。


「えっと……。ティナさん?」

 取り敢えずリズが困っていそうなので、離れるように言おうかと。

「リズさん、リズさぁぁん! くんかくんか」

 あ、聞いちゃいねぇ。


「良かった良かった! 生きてて良かったですぅ!───偵察活動のミスの責任を追及されて、そのバツとしてグエンのくそボケに手籠めにされて、誘拐された挙句に、魔物に食われたって聞いて……私、」


    「………………をい」


 ビクリと震えるマナックさんの3馬鹿軍団。


「───おまけに、グエンが装備を持ち逃げして、パーティの寝込みを襲ったって聞い、て」


   ──うほ!


 変な笑い顔になるグエン。


「最期に、ニャロウ・カンソーを仲間におしつけとして、まぬけにも自分が食われたって、リズさんも巻き添えだって聞いて───」

 

    「…………ほっほう!!」


「え、でも、え?…………って! グエン?!」

「――おっす」


 ワンワン泣いていたティナがようやくグエンに気付く。

 そして、リズとグエンの顔を交互に見ると――……。


「し───」


 し??


「死ね! この女の敵ぃぃぃい!!」


 ジャキィィィイン!! と、どこから取り出したのか、折り畳み式の特殊こん棒軍用警棒を取り出すと大上段に振りかぶってグエンに振り下ろす!


「うぉぉお?!」


 受付嬢とはいえ、さすがは筆頭――そして、辺境のギルドの職員なだけはある!!

「てりゃぁぁあ!!」

「うぉ?! ちょ!!」

 危ないところを掠めるこん棒!!


 その頃にはようやくリズも正気を取り戻して……。


「は?! って!───ちょ、ちょっと! ティナ何やってんのよ!!」

「あうち! この女の敵ぃぃい!」


 ブンブンとこん棒を振り回すティナ。

 危なっかしくてしょうがない。


「ちょっと落ち着いてよティナ。見ての通り、あたしは無事よ」

「くそぉ! このぉ!! 死ねぇぇえ───って、あれ? そ、え? あ………………。そ、そうです、ね」


 ガランガラーン……! と、ようやく金属製のこん棒を取り落としたティナが深呼吸をする。


 たしか、この人はこれでいて辺境の町の筆頭ギルド受付係だったよな。


 この話しぶり、

 そして反応を見るに────……。


 すぅ……と視線をマナックに向けるグエン。



 ───ニッッッッッッッコリ。



「…………よぉ、帰ってきたぜ。御大層な報告・・・・・・は済んだのか?──マナック」

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