第26話「よぅ……! ただいま」
※ ほんの少し前 ※
──マナックたちはどこだ?
そのグエンの言葉に反射的に目をそらそうとするシェイラ。
だが、ぐっとそれをこらえると、
「あ……。あ、あっち──」
シェイラが目を泳がせながらギルドの奥を指出す。
すると、その指先を畏れるように、
ササーと、周囲に群がっていた冒険者たちが波を割る様にして逃げる。
興味はあるけど、巻き込まれたくないとばかり、シェイラの指さす方向から
好奇心で見守る冒険者の面々も、SSランクパーティのいざこざに巻き込まれては溜まらないと思っているのだろう。
それにしても────あっちって……。
あまり馴染みのないギルドのため、グエンはリズに目配せする。
「……あー。あそこはギルドのVIP専用ね」
そう言って、無感情に肩をすくめるリズ。
そういえば、リズはここのギルドから斡旋されて来たんだったな。
最近のことのはずが、ずいぶん前に感じる。
リズ曰く、たまたま近くで仕事があったから立ち寄っただけとは言っていたが、少なくともグエンよりは見知りしているらしい。
「へーVIP専用、ね」
なるほど。
ギルドから、肝いりで紹介されたメンバーなだけに、リズはギルド内部に詳しいようだ。
というか、いまさらながらリズって何者なんだろう??
ただ、パーティーを探していただけという割には、聡明だし、なにより腕が立つ。
ギルドの斡旋なんか受けなくても引く手あまただろうに……。
「どーすんの? まぁ、聞くまでもないだろうけど」
「そりゃあ…………」
決まってるだろうに───。
「いいけど、調度品には気を使いなさいよ。VIP専用スペースは家具だって、かなり高いのよ?」
ほーん。
「――へぇ。人様を見捨てておいて、VIP扱いで優雅にお茶か……」
グエンの皮肉に、リズも薄く笑う。
「……おまけに、仲間のシェイラは一人で荒れくれものの多いギルドのエントランスに放置っと。───マナック達は、どうやら、いよいよ本気で腐ってるみたいね」
その言葉を聞いて、シュンとしてしまったシェイラ。
そう言えば、一人でポツネンと放置されていたな?
いくらSSランクパーティの魔法使いとはいえ、シェイラも「女子供」だ。
こんなむさ苦しい空間に放置していいはずがない。
…………ま。グエンの知ったことじゃないけどね。
「あ……。ぐ、グエ──」
「行くぞ、リズ」
「はいはい。あんまし、もめ事起こさないでねー」
うるせー。
落とし前をつけに行くんだよ。
グエンはリズを伴い、冒険者の壁を割ってノッシノッシと歩いていく。
向かう先は愛しき仲間のおわす場所────
はははは。
「────誰が勇敢な最期だって?」
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