第6話 優しさ程残酷なものはない。

「大変恐縮ですが随分とあの女神にお優しいのですね?」

宇宙に広がる神殿の玉座で目を瞑ってしまわないうちにとθがΣに質問をした。

「儂はいかなる時も愛情に満ちているぞ。」

そう言って再びΣは目を閉じた。θは首を傾げた。

「愛人は愛人でも愛の女神だから飽きられることもなくいいねえお気楽で。Σ様に軽々しく話しかけるのはあんたぐらいだよ。」

Δが溜め息混じりにθを小突く。

「人間は生きて百年らしいぜ。まあその前にあの男は私の毒で即死だろうけど。」

「そういうこと…」

θが目を見開き数回軽く頷いた。

「随分と父上は残酷なお方だ。」

「ロマンがあっていいじゃないの。それより彼女の代わりの正妻どうなされるのかしら。」

にこやかにΔの方を向く。愛らしい笑顔は何処か常に冷たさを含む。Δの眉間にしわが寄る。

「安心しろ。蛇の力など司っても仕方がない。」

「仕方がないって失礼な!」

Λが歩き出す。θは面白そうにクスクスと笑う。

「そなたの口から失礼など出るとはな。なら私の妻になるか?」

「Λ様がどうしてもとおっしゃるなら側室ぐらいなら…。」

僅かに頬を紅潮させたΔが目を逸らす。

「名案だな。」

三人の神は玉座の前を後にした。宇宙に笑い声が静かに響く。

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