第16話<セカンド・サバイバル・ウォー>
それは今から約150年前、人類存続を賭して地球と火星、さらにその軌道上で、数年に渡って繰り広げられた、異星生命体
人類の主敵であり、人類を最も殺した地球外起源の知的捕食生命体。
この宇宙空間を住処とする、主にヒトデ型知的生命体に付けられた、長すぎる学名で呼ぶ者はいない。
誰もがInvader from Hell、俗称
太陽系外から襲来した、無限の形と性質を持つことが可能な捕食生物により作られる群。
それは群体にして個体。個体にして群体。
如何なる環境にも適応し、増殖して、喰らう。
強靱な肉体、狡賢く働く悪知恵――時に、その叡智は神のごとく。
共に高度な役割分担を行う社会性と軍隊的な統制を有する生態に、知略としか思えぬ行動も多々見受けられる。
彼等は不可思議な能力を持ち、山も空も海も縦横無尽に地球を駆け巡り、破壊の限りを尽くした。
そして、もう一つの異星生命体が
常に眩く煌めき、姿かたちがはっきりと見えない不思議な地球外起源の生命体。
学名Light spiritual body of extraterrestrial origin(地球外起源の光精神体)。
俗称
皮肉なことに、人類を滅亡寸前の状況に巻き込んだ張本人が、結果的には人類を救った。
第一生存戦争直後、多くの者が
第一次生存戦争で二つの異星生命体は、月を削り、地球で戦った。
彼らの戦いの余波に巻き込まれ、排除を試みた人類だったが、僅か半年で三〇億人が死んだ。
この戦いで人類は唯一頼りになる兵器――核兵器を多用したが、放射能汚染もまた凄まじいものとなった。
永遠に続くかと思われた第一次生存戦争だが、その結末は呆気なく唐突に終わった。
人類が戦いに巻き込まれてから約一年後――。
アフリカ大陸のキリマンジャロ山近くで、
その衝撃は巨大隕石の衝突と変わらない規模の破壊をもたらした。
美しかったキリマンジャロ山は跡形もなく消し飛び、アフリカの大地は東から西へとケーキのように切り裂かれて巨大な地峡が生まれた。
インド洋では超巨大津波が発生し、沿岸部から数十キロ奥の内陸部まで破壊され尽くした。
この一年での死者は40億人を優に超え、大都市は破壊され尽くされ、アフリカ大陸とユーラシア大陸の半分は灰燼と化し――地球は氷河期に突入した。
第一次生存戦争は、甚大な被害を人々にもたらして終わった。
人類が共通の暦として復興歴を制定してから、約150年後――。
続く、第二次生存戦争。
第一次生存戦争で人類を救ったAILは、遂に人類と敵対した。
火星で激しい戦いを繰り広げ、その後も地球へと撃ち出し始めた隕石弾により、人々からAlien in the Lightと唾棄されるようになった。
勝てない異星生命体に二正面作戦を行なうことの無謀さは誰もが理解していたが、残念なのことに、300年近く経った今でも人類は彼らと挨拶の一つも交わせず、交渉しようにも手段がなかった。
だから、人類は生き残るための手段など選べなかった。
数えきれぬ程の核兵器が地球と火星で使用されたが、それを問題視する者など誰もいなかった。
衛星軌道上から投下された核兵器は大小含め三桁を越え、地上では砲撃が昼夜を問わず尽きることがなかった。
核融合炉前提の極高出力レーザー兵器や大質量弾を撃ち込める高威力電磁砲が十分に配備されるまで、人類が使用可能な、もっとも高威力で費用対効果の優れた兵器は水爆などに代表される核兵器以外は存在しなかったのだ。
幸い、人類は火星の生存圏を守り通したが、その犠牲と損耗は多大なものであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます