第10話<兆候>

「君たちは、我々人類の最初にして、最大の過ちは何か考えたことはあるかね?」

「コンクエスト号を止めなかったことですか?」

「いいや。違うよ。

 我々人類の過ちは、西暦2018年に発見した恒星間小惑星〈オウムアムア〉を、ただの岩だと信じ込んだことだ。

 今ならば、君たちにも分かるだろう。

 本当の小惑星など、ただの岩の塊だ。

 スイング・バイ以外で速度を変える要因は確かにある

 だが、あれほど変わるわけはないんだ!

 あれは急加速し、その上急減速までしたのだ!

 それでも2018年の人類は、一部の者を除いて、様々な仮説を唱えて、あれを完全な自然物として結論づけた。

 結論づけてしまったのだ!

 自らの知識不足を顧みず、確認と観測から導き出される不合理を、今は説明が出来ないからと――ただの小惑星として扱った……。

 人類は、神々が与えた警告を無視してしまったのだ。

 これが全人類に対する許しがたい愚行であると、この時代に生まれた君らならば、正しく理解できるだろう?」


 復興暦29年 アメリカ合衆国のとある大学の公開講義の会話。

 全世界に放送形式で提供された公開講義は、先人たちの警句として今も頻繁に引用されるシーンである。

 第一次人類生存戦争後、社会基盤自体が崩壊した国々に対して、比較的余裕がある国々は、再構築したインターネット等を利用した授業を無償提供した。

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