第8話<木星間往復資源運搬宇宙船コンクエスト号>

「しかし、博士。本当に、あれを回収するんですか?」

「――君は怖いのかい?」

「ええ、正直に言って。私は今でも反対です。あれは破棄すべきです」

「心配性だね。怖いという感情は知らないという情報の欠如を教えてくれる、脳機能の一つだ」

「だから、なんですか?」

「その恐怖に、根拠はないという科学的な証拠だよ」


 木星間往復資源運搬宇宙船<コンクエスト>搭乗員、医師ルドルフ・ルーイと機関士リズリット・ヘンダーソンとの会話。

 これは船内のミッション・レコーダーに録音されており、西暦2170年に小惑星群周辺で損傷した船体とともに回収されたが、二人の遺体は発見できなかった。

 木星間往復資源運搬宇宙船コンクエスト号の乗員が、人類史上初めての異星生命体による犠牲者だと全世界に周知されたのは復興歴元年のことである。

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