第3話<ファースト・コンタクト>
「――ヒューストン。
そちらの受信態勢完了を確認した。
今回の通話は、確実に録音を頼む。
では、改めて。
コンクエスト号船長のマグダネルだ。
今日は大事な報告がある。
伝えるべきか、伝えないべきか、ここ数日……皆で悩んだ。
今から言うことは、正気じゃない奴が喋っているように聞こえるかもしれない……。
だが、全て本当のことなんだ。
今から俺が報告することは、嘘や虚言でないことを神に誓う。
こんなことを聞けば、コンクエスト号では一体何が起きているのかと怪訝に思うだろう。
俺自身、気が狂ったと思った。
念のためドクターの診断を受けたが、結果は異常なしだ。
これから聞く者も、俺のことが信じなられなくても、ドクター・ルドルフのことは信じられるだろう。
俺は正気だ。
すまない……本題に入る。
俺たちは地球に向かうUFOを二つ確認した。
一つは光り輝く何かで、もう一つは暗い三角錐のような形をしたものだ。
光り輝く何かは、暗い三角錐のようなものに追われている。
二つの軌道から計算すると、行き先は地球しか考えられない。
残念ながら、両方とも細部までは分からないし、当然理由も分からない。
そこまで近い場所で見ているわけじゃないからな。
俺たちには、この二つはどうも戦っているようにしか見えないんだ。
こんなことを言えば、休憩中にハリウッド映画を見過ぎたと思うだろう。
最初、当直から報告を受けたときは俺もそう思ったよ。
だが、証拠があるんだ。
認めたくなかったが、それ以外の結論が考えられなくなった。
四日前に報告した、右舷第6コンテナの全損事故を憶えているだろうか?
全損したコンテナから8つも離れた別のコンテナ内から、コンテナに衝突したと思われる未知の物体を発見した。
これも細かいことは全然分からない。
生物か無生物かも判断しかねる、奇妙極まりない代物だ。
まあ、言葉をいくら並べても意味はないだろうな……。
論より証拠だ。
録画したデータを送る。
まずは、それを見てくれ。
俺たちは、この訳の分からないものを船外コンテナに保管して曳航していく。
何か対策を決めたら、連絡して欲しい。
以上で、通信終わる」
西暦2169年、木星間往復資源運搬宇宙船<コンクエスト>船長マグダネル・ヘンダーソン中佐から送られた、米国ヒューストン宇宙基地への交信内容。
人類で初めて異星生命体
残念ながら、彼らコンクエスト号の乗員は誰一人として地球に帰還できなかった。
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