第9話 初放課後デート①
放課後、俺は
別に逃げようだなんて思ってなかったのだが、そこは黙っておく。
「放課後デートっていっても、いきなりだったから俺なにもプランとか立ててないぞ?」
なにせ俺はほぼ恋愛経験値がゼロである。
それ以前に女子と二人きりでお出かけなんて…それこそあれ以来か?みっちゃんと公園で遊んでた頃以来だな。うーん、あれはノーカンだな。
なんか自分で考えて悲しくなる、しくしく。
「そんなの別にいーの!どーせ拓磨のことだから、デートは男がリードすべきだーとか思ってるんでしょ?私そんなの気にしないし、拓磨とデートってとこが重要なの」
「そ、そういうもんなのか?」
「少なくとも私はそーなの!」
「お、おう」
「わかったらよろしい!じゃあレッツ放課後デート!」
そう言って笹原さんは腕を組んでくるが、幸せを
こうしてショッピングモールを二人で歩いていると、周囲の人もこちらをちらちら見ている気がする。
そりゃまぁ当然だろう。金髪ショートカットで、ザ・陽キャって感じの美人と、どこにでもいるような平凡な男子高校生の組み合わせである。彼女に自分が釣り合っていないことくらい自覚はしている。
「…ねぇ、拓磨?聞いてる?」
「あぁ、すまん。ちょっと考え事してた。で、なんの話だっけ?」
「もー!えーと、映画でも見よー!って話なんだけど…」
「いいね、それにしよう」
「良かった!やっぱ映画ってデートの定番でしょ?憧れだったんだ」
彼女はまた嬉しそうな表情をしてくれる。
そんな彼女を見ているとこちらまで嬉しくなってしまう。
そうこう考えているうちに映画館の前まで辿り着いた。
「で、なにか見たいのあるの?」
「私はねー、『夏空の星の下で』ってやつが見てみたいかな」
『夏空の星の下で』、確か家庭状況の複雑な少女が毎晩公園で一人で過ごしていたところ、ある少年がランニング中に彼女を見かけ、そこから毎晩公園で会うようになった。そこから彼女の冷え切っていた心を少年が溶かしていく。そんな感じのストーリーだった気がする。部類はラブストーリーだったっけ。ブランチで紹介されてるのを見た際に、自分も気になっていたのでなんとなく覚えている。
「わかった、それにしよう。ポップコーンとかも食べるよね?」
「そーだね!やっぱりポップコーンは欠かせないからね」
「じゃあ俺はそれ買ってくるよ。うーんとチケットは任せてもいい?」
「ガッテン承知!」
それから俺はバケツ型のポップコーンを買い、チケットを買い終えた笹原さんと合流し、スクリーンを確認してから中に入る。
笹原さんの取って来た席は、ちょうど真ん中のちょっと後ろくらいである。前すぎるとスクリーンを見上げる格好になってしまうため、首が疲れてしまう。なので笹原さんチョイスの場所はベストポジションである。
「やっぱ平日だと空いてるね〜、この席が空いててラッキーだったよ〜」
「人多いと見にくかったりもしてしまうしな」
「そうそう!拓磨もわかってんじゃん!」
そんなやりとりをしていたらそろそろ上映時間である。映画鑑賞の際の注意の映像が流れ始めている。思えば久々の映画鑑賞だ。一人だとそうそう来ることはないし、宗助には前島がいるため、映画となると二人で行くのではないだろうか。
ついに映画が始まる。
女子と二人で映画鑑賞となるとなんかドキドキしてしまうな…。
思わず彼女のほうを見てしまう。
既に映画を真剣に見始めている彼女の横顔は
––––––とても、綺麗だった。
思わず言葉を失ってしまう。
普段は天真爛漫な表情を見せてくれ、とても可愛らしいのだが、真剣な表情をすると、とても大人びて見える。てか、それもう最強兵器じゃん。
あまりに見つめすぎてしまったせいか、彼女も俺の目線に気づいたようで横目で俺を見てくる。
「………ん?どした?」
「いや……なんでもない」
いかんいかん、せっかく映画を見に来たのだから映画に集中せねば。
それから俺は映画と真剣に向き合い、いつのまにか映画の世界へと引き込まれていったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます