第5話 爆弾
ジリリリリリリン−–––ジリリリリリリン。
俺の大嫌いな音が響いた。
朝を告げる合図。スマホにセットしてあった目覚ましの音である。
時刻は午前七時をまわったところだ。
俺の住むマンションは学校から歩いて行けるほどの距離にあるため、この時間に起きても十分間に合うのだ。一人暮らしには広すぎるが。
寝起きは普段からあまり良いほうではないのだが、今日はいっそう悪い。
昨日のことがあったからだろうか。
いつもよりも寝付きが悪く、眠りも浅い。
「はぁ」
小さくため息をつき、学校の支度をする。
今日は金曜日のため、今日を乗り切れば明日は休み。そう考えると気が楽になる。
いつものように飲むヨーグルトを飲み、着替えを済ませ、家を出る。
マンションのエントランスで最近では見慣れた姿を見つける。
金髪ショートカット、少し短めのスカート––––間違いない、笹原さんだ。
そして笹原さんもこちらに気づく。
「やっと来た〜」
「待ってたのか?」
「そうなんだよ〜、昨日私の話も聞かないで
「そ、それはすまん」
「も〜、軽く流して〜」
いや、ほんとにすまん。
「てか、拓磨の部屋番号なに?」
「あー、六◯三号室だよ」
「六◯三号室ね、わかった」
土日に遊びに来るつもりだろうか。まぁ、俺は構わないが。
「あとLINE教えて〜。まだ連絡先交換してないでしょ?」
「あぁ、そうだったな」
そう頷きLINEを交換する。
「よし、じゃあ一緒に学校行こ!」
そう言って、一人で通い慣れた道を二人で歩いていく。
ラノベや漫画だとよく見るシーンだが、これは現実。俺にとってはとても新鮮である。
うむ、青春っぽくて悪くないだろう、と旬の芸人みたいなノリで心の中で呟いた。
□ □ □ □ □
あの後しっかり午前の授業を受け、今は昼休み。
まだ昼休みに入ってばっかりでまだクラスの違う笹原さんはこの教室に来ていない。
「…で、あの笹原と付き合うことになったと?」
「まだお試しだけどな、お試し」
俺は話を聞かせろとしつこい
「なんだよそれ〜、普通に付き合えばいいじゃねぇか。なぁ?
そう言って宗助が話をふった相手は、
宗助の彼女であり宗助を通じて話すようになった、唯一の女友達…と言っていいのだろうか。まぁ、そんな感じの
「ほんとだよネ〜。そーちゃん、そーちゃん、これはツンデレというやつではないかね」
「それだ咲季、拓磨は…ツンデレだったんだなっ!」
二人の頭に手刀を投げ下ろす。ドスッ。誰がツンデレじゃこら。
「そーちゃん、いたいヨォ〜、たっくんがいじめる〜」
「俺もいじめられてる〜」
なに二人でキャッキャしてんだこのやろう。
いじめてんのはそっちだろ。
こら、二人でなに頭なでなでし合ってるんだ。こいつらには周りを気にするという言葉を知らないのか。
「たっくま〜!いるーーーーー?」
そんなことを考えてたら教室の入り口から声が掛かった。この声は笹原さんだ。
「はいはーい、ちょっと待っててー」
俺は大きめの声でそういいながら、朝買っておいたコンビニ弁当を持って笹原さんのもとに向かう。
俺は周りの目を気にするんでね、はい。
あのバカップルとは違うんでね、はい。
当の二人はというと–––––なんか生温かい目でこちらを見ていた。このやろう。
そんな目に送り出されながら俺は教室を出て行った。
□ □ □ □ □
昨日はとても疲れた。
え?あの後笹原さんとの昼食はどうだったかって?えぇ、それはもう幸せな時間でしたよ。笹原さんからのあーんとか…、え?あのバカップルと変わらない?うるせっ、放っとけ!
今日は土曜日で休みなためがっつり寝込もうと心に決めていたのだが−–––––
ピーン、ポーン––––ピーン、ポーン
そんなインターホンの音で目が覚めた。
枕元のスマホを見ると午前八時半をまわったところだ。
やけに早い来客である。
スマホには『今からそっち行くから』とLINEのポップが浮かんでいる。
おそらくこのインターホンを鳴らしたのは笹原さんだろう。
俺は軽く髪型を整えて、玄関を出る。
「はいはい、こんな時間からなんて聞いてな–––」
そこには後ろに二人ほどを伴った笹原さんが立っていた。
しかもただの二人ではない、なにやら仕事着のような服を着ている。しかも、段ボールを抱えて。え?待ってどういうこと?と混乱しているなか、どんどん段ボールを俺の家の中へ運んでいく。え、ほんとにどゆこと…?
なんか見たことある段ボールだな––––と俺はふと思う。テレビのCMで見た気がする。
えっと、この段ボールは、––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––、引っ越しのサ◯イ–––––––?–––––は?
「ちょ、ちょっと待って!どゆこと⁉︎」
俺は思わず狼狽えながら、そんな声を出してしまった。俺のその疑問に笹原さんは––––
「?、あー、私今日からここに住むから」
そう、けろりと答えた。うん、聞き間違いじゃない、しっかりそう聞こえてしまった。
–––––––––––は‼︎⁇
「ほら、その段ボール奥にやって、引っ越し大変なんだから、
「えっと…引っ越しって、う、うちに?」
「どー見てもそうでしょ?」
俺の平穏な休日に、爆弾が落ちた。
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