+α あの日のこと
アタシ、いや、ここで無理にギャルっぽくしなくてもいいか。アタシじゃなくて私と言おう。
私、
しかし、二つ下の弟ができたときからそれは変わってしまった。私もそのときはきっとわかっていたんだ。だって、まだ幼い子のほうが手間はかかるし、してあげなくちゃならないこともたくさんある。私へ対する両親からの目が以前より遠ざかるのも必然だ。「お姉ちゃんなんだからそのくらい自分でやりなさい」「お姉ちゃんなんだからしっかりしなさい」これはもっともである。本当にそう思う。
しかし、弟に対する両親の愛情は、私にたいするものよりもとてつもなく大きかった。幼い私にもわかるくらいには。
お父さんは「お前はきっと将来大物になる」だの「欲しいものがあれば、言いなさい」だの。あれ私がその弟くらいの歳のときに、これ欲しいって言っても「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」って言ってなかったっけ?
そんなことも思ったりした。
私は小学校一年生のとき両親から褒めて欲しくって、小一にも関わらず勉強もし、いい子であろうと頑張った。通知表はクラス一番だったっけ。私は両親にやっと褒めてもらえるとうきうきして家に帰った。
「へぇ、良かったじゃない、それにしても
これは通知表を見せた時に放った母のセリフだ。あっ、龍之助っていうのは弟のことね。
この時のぶっきらぼうに放たれた私に対する言葉は幼い子供の心を折るには十分だった。お姉ちゃんと言ったってまだ小一だ。そんな強いメンタルなんて持っていない。親なんて私に興味なんてない、龍之助にしか興味がない。そう思っても仕方ないだろう。なんせ小一のピュアな子供なのだから。
この日、私は近所の公園に一人で駆け出した。とりあえず一人になれるところに行きたかった。
何時間こうしていただろうか。この日はもう秋も終わろうとしている日だったため寒さが体に堪えたことも覚えている。公園はしんとしていた。まるでこの空間だけ違う世界みたいに、切り取られた世界みたいに思えた。意味もなく一人でブランコに腰をかけ俯いてたっけ。一人で家からでて一、二時間は経っているというのにお母さんは様子すら見に来ない。それがさらに私の心を傷めた。
そんな生きる屍みたいな私に
「なにそんなくらいかおしてるの?えがおじゃないとしあわせもこないっておかーさん言ってたよ!」
彼は太陽かと錯覚するくらいの眩しい笑顔でそう言った。その時の私はどんな顔をしてたんだろう。きっとひどい顔をしていたに違いない。そして彼はこう続けた。
「ぼくはかねむらたくまっていうんだ!きみをとびっきりのえがおにしてみせるよ!」
彼は覚えているかわからないけど、私はきっとこれからも忘れることはない。
だって、あの彼との出会いの日が私にとってなによりも大切なものだから–––。
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