第2話 笹原さんの俺への用事

 拝啓10分前の俺へ。俺は元気です。いや、元気なんだけど…すごく困惑しております、はい。


「ア、アタシと、つ、付き合ってくれッ!」


 これ、笹原が先程、俺へ向かって言い放ったセリフです。

 信じられますか?金髪ショートカット、スカートの丈は他の女子生徒よりもやや短めの格好をした、出るとこは出ているスタイル抜群の美人が、いやいや、その上カーストトップの不良女子が一般的な冴えない男子高校生に告ってきたんですよ?

その彼女はというと…ほんのり頬を染めてモジモジしている、か、かわいいっ!


「お、俺で合ってる…?」


「だから、金村ってこの学校でオメーしかいねーだろッッ!ま、間違って…ねぇよ…たしかにお前だよ…」


今度はボフンッと音がでそうなほど顔を真っ赤にしている。なんだよこいつ…かわいいしかねぇ…


「な、なんで俺に?」

「好きだからにきまってんだろ?」

「いや、まあ、それしかないですよね…でも、笹原さんと俺って接点あったっけ?」

「あー…やっぱ気づいてなかったかぁ…」


なにやら笹原さんは肩を落としているようだ。あれ、俺、笹原さんと接点あったっけ?

てか、笹原さんはなにやら覚悟を決めたような表情でこちらを見ている。え、な、何?


「ア、アタシさ下の名前、美津璃みつりって言うんだけど…聞き覚えない?」


みつり、みつり、みつり–––––。俺は必死に記憶の中を探る。探って、探って、探って–––。そういえば、小さい頃に毎日のように近所の公園で女の子と遊んだっけ?俺は毎日のようにみっちゃん、みっちゃんと呼んでたような––––、ん?みっちゃん?みつり?いや、でもみっちゃんなんて他の名前のやつのことも呼べるよな?しかも、纏っている雰囲気があの女の子と全然違うし…でもそれしか心当たりがない。確認してみるか?ええい、ままよ!どーなでもなれっ!


「ま、まさか…み、みっちゃん…?」

「そー!それだよッ!昔公園でよく遊んでたの覚えてる?」

「ま、まじか」


まさかの驚愕展開。

あのみっちゃんは笹原ささはら美津璃みつりだった。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る