昔結婚の約束をした幼馴染が不良女子になっていた件

夜月 露

第1話 怖いあの子

 六月、帰りのHRが終わった教室はまだガヤガヤとしている。

俺、金村かねむら拓磨たくましま宗助そうすけと雑談をしながら帰り支度をしていた。


「おい拓磨聞いたか?あの笹原ささはらまた、告られたらしいぜ。あの笹原に告る奴もすげ〜よなぁ、あんな怖い奴に告るとかよっぽど自信あるんだろうな」


「まぁ、あいつに告る奴らなんてイケイケでチャラチャラの奴ばっかだしなぁ、でも俺らには無縁の話だろ?住む世界が違ぇよ」


「まぁ、そうだけどよぉ、でもあいつめっちゃ美人じゃん!付き合えたらどれだけ幸せか…」


そう言いながら、宗助はわざとらしくトホホ顔を作っている。俺はそれに苦笑いで返し、「さっさと帰ろーぜ」と言葉をかける。

二人並んで教室を出ようとしたとき–––


ダダダダダダッ–––…。んー?誰か走ってくるなぁー、んーーーー?あれは––ひょっとすると–––いや–––ひょっとしなくても–––


「おい、宗助、笹原がすごいスピードでこっちに向かってきてんだが」

「誰かにムカついて殴りにでも行くんじゃね?俺らには関係ねーし、はやく行こーぜ」

「あぁ、そうだな」


でも、俺らには関係ないと歩みを進めようとしたとことで––––


「おいっ!金村!待て!待てって!」


あれ?俺?いや他に金村てやついなかったかなーー?きっと居たな!多分そいつのことだ!よし帰ろう!


「おい!待てって‼︎」


ガシッと肩を掴まれた俺。え、俺かよ。


「金村ってこの学校でお前しかいねーだろッ!ったく無視しやがって」


「ご、ごめんなさい、許して…」


「とにかくお前に話があるからちょっと来いッ!」


強引に連れていかれそうな俺は助けを求めに宗助を見る。宗助は菩薩ぼさつのような笑みを浮かべ「南無三…」と呟いている。おいっ!てめぇ!あとで覚えてろよっ!

このまま俺は引きずられるように笹原に誘拐されるのだった。


あぁ、拝啓10分後の俺へ。元気ですか?

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