08話・お部屋はこちら

「他にも聞きたいことある?」


 一息ついて、紅茶も飲み終わったアリスがこちらをじっと見つめてくる。少し顔を傾けてて、きれいだなぁとついつい見いってしまう。

 聞きたいこと、ないわけではないけど、言い出しにくいんですよね。どうして、この指輪をくれたのか。さっきのハグはなんだったのか。とか、とか! でも、聞いてみて、答えが思ってたのと違ってたら、恥ずかし死する。うん。あ、そうだ。と思いついたその時、


 コンコン


 誰かがドアをノックする。


「失礼します。アリスト様。王陛下がお呼びでございます」

「うん、今行く」


 返事をすぐに返し、アリスが立ち上がる。


「リサちゃんは、ここにいてね。父上と話してくる。とりあえず、国じゃないけど第二王子ボクのパートナーだから問題ないよねって言いくるめてくるね」


 イタズラっぽく笑いながら、アリスが部屋から出ていく。

 入れ替わりで入ってきた侍女さんが、紅茶をてきぱきと入れ直してくれた。

 人様の部屋、しかも男性。これは身の置場が、ない!


「アリスト様より、向かいの部屋にお部屋を用意するよう、うけたまわっております。紅茶が飲み終わる頃にはお呼びできるかと思いますので、少しお待ち下さい」


 いつの間にそんな指示を!? 侍女さんが、アリスの分のティーカップを片付けにいった。


 ふぅ。なんだか、色々聞かされて頭のなかがパンクしそう。緊張した体をほぐそうと、んっーと伸びをした。

 聞いたことや聞きたいことをまとめて整理しておかないと!

 いい香りの紅茶をゆっくりと飲みながら、侍女さんが呼びにくるのを待った。


 ーーー


「なんだ、これ?」


 塔の部屋も十分に豪華でしたが、その部屋の10倍は豪華できらきらで、しかも広いんですけど!

 マタタビ棒一本でどれだけあいだスルー、スーパージャンプアップわらしべ長者ですか! もうこれ、ゴールですよね?


「では、何かあればお呼びください」


 ここで、まっていればいいのかしら。あぁ、落ち着かない。

 天蓋付きベッドなんて、乙女の夢かもしれませんが! 普通のベッドでいいんです。お風呂付きだー! わー、猫足バスタブだぁ! 可愛い! けど落ち着かない!

 なんだろう。落ち着かない! あちこち見てまわっていると、コンコンとノックが聞こえてきた。


「はぃぃっ!」


 急いでドアに近いテーブルに座る。声が少し裏返った気がしたけどきっと気のせいだろう。


「アリスト様がお部屋にうかがって大丈夫かと、よろしいですか?」

「大丈夫です!」


 急いでスカートを整える。はっ、しまった! 部屋の中を見てて、まだ考えをまとめてなかった。


「失礼するね」


 アリスが入ってきてしまった。


「この部屋で大丈夫そう? 何かあったら言ってね? それともボクと一緒の部屋がよかった?」

「ダイジョウブですっ!」


 何を言い出すんだ。あ、まあ部屋はそのうち慣れるよね……。たぶん。だから、笑わないでください!

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