第16列車 私の中の特別急行

 私は、極稀に「無性に特急列車に乗りたい」という時が来る。それは嬉しいときや悲しいとき、自分が失敗して怒られて落ち込んでいるなど。鉄道ファンという趣味の1筆書きに文字を置いている中で自分は、列車に乗ってどこかの街へ出かけることが好きであると高校生のときそう感じた。その中で在来線の中の最速達種別である「特別急行」に乗るのが好きだった。私の高校時代では、室蘭線沿線に住んでいたときには数え切れないほど特急に乗ってきた。いつも乗る列車に乗り遅れて特急に乗って高校の最寄り駅まで急いで学校に行ったときもあれば、学校から帰るときには「早く帰りたい」という一心で特急に乗ったり、「たまには贅沢でもして帰るか」と思い、自動券売機で指定席券を発行して指定席に乗って帰宅したりと思い出を語ればキリがない程のことはしてきた。しかし、高校を卒業した今現在でも「特急に乗りたい」というものは来る。一度、特急に乗ってしまえば高速で景色が流れていき、駅を通過するのもあっという間だ。そんな特急列車でも家族と乗っているときもあれば、一人で乗っているときもある。私が窓側に座っていると、車内は混雑しているからか隣に座ってくる乗客がいる。そして、隣に座った乗客から話かけられることがあり、世間話をする。海外旅行から帰宅途中の人や50年ぶりに旭川に行くお爺さん。普段の生活している中でなかなか聞けない話が多かった。特に海外旅行の話や職に関する話なんて、滅多に聞けないものである。写真を見せてくれて、「彼女と旅行に行きなよ~、若いうちはどこか行って楽しむほうがいい」と笑顔で私に伝えてくれた。年を取ると体力そのものが衰えてくる。体力がなければ遠くへ行くことが困難であると。体力がある若い者には、好きなことやどこか行くべきというのは本当なのだろう。鉄道路線が縮みながらも新幹線というもので多少は伸びているものの、車社会に頼らざるを得ない。新幹線は値段こそ高いが100km以上離れた町を日帰りで座っていけるのだから、老若男女問わない便利な乗り物になったんだから交通便の価値としては高い。私の中の特別急行は、とても考え深いものがある。今日もまた特別急行に乗車するのであった。

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