第4列車 切なき発車メロディー

 「旅立ちの鐘」…こんな言葉は聞いたことはあるのだろうか、こんな言葉を聞くのは鉄道ファンやJR北海道の職員、車内清掃員ぐらいしか居ないだろう。

 「旅立ちの鐘」というのは、場所にして北海道は南側にある函館はこだてにあり函館駅の発車メロディである。JR北海道唯一の発車メロディで北海道内で発車メロディを聞くなら函館駅しかないのである。函館駅は札幌や小樽方面、東京方面など各方面から往来する重要な駅であり、また、函館市の中心部に存在するため通勤、通学、旅行など欠かせない駅でJR北海道在来線の起点はここ函館駅からなのである。現在、旅立ちの鐘を聞けるのは定期特急列車の「特急北斗号」や臨時特急列車「ニセコ号」「臨時特急北斗」の発車のみである。

函館駅7番線には特急列車が札幌に向けて出発準備をしている。発車まで残り10分。ホームでは、急ぎで列車に駆け込む人や家族連れの子ども、おばあちゃん、おじいちゃんを見送る人たちなどがいた。

 発車3分前、「カーン…カーン…カーン…」と発車メロディが鳴り始める。いよいよ特急列車は約300km以上離れた北海道最大都市、札幌さっぽろに向けて出発する。このメロディーを聞くと「あぁ〜いよいよ函館から出てしまうのか」としんみりとさびしい、なんて切ないんだ。ホームには家族に見送るおばさんが、青春を過ごした仲間と別れを告げる若者が、列車内からおばあちゃんから離れるのは嫌で泣いてしまう小さい子供が、何もかもが寂しく、悲しく感じる。メロディーが終わり、駅員による放送を終え、安全確認。車掌は「ピィーッ」という笛を鳴らし、駅員と車掌は出発完了の合図を送り、列車は扉が閉まり発車。列車の下から聞こえるブレーキが「ヒュッヒュッー!」と緩解する音と共に「グォォォオンッ」とエンジンが唸りながら、列車は函館駅を出ていった。

 この駅でもまた人々の物語の一面を見る事が出来たのである。国鉄時代ではこういうが日常茶飯事だったのではないだろうか。スマホが使えてインターネットがある現代ネット社会の今、そういうのは随分少なくなった気がする。スマホさえあれば仲間や家族にすぐに連絡出来るものであるから。

 たまには駅ホームで人を見送るのは良いではないだろうか。やはり、駅ホームで人を見送っても何か心に来るものがある。

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