後日談

私はその日の夜には予定を立て、諸々の準備を済ませた。休みの期間は10日間。夏休みに加え余っていた有給も消化した。会社に電話した時、上司に「大丈夫?帰ってくるよね?」と謎の心配をされた。大丈夫ですよ〜、と返しつつ申請を出し、無事に受理された。そして肝心の移動手段だが、電車を乗り継いで行くことにした。行く先々での街並みや出会いを楽しみたかった。帰りは時間がないので新幹線だが。親には1週間後に行く、と連絡した。1週間かけて東京へ向かうなんて前の自分が聞いたら馬鹿みたいだ、と呆れるんだろう。それでも、好奇心は止められなかった。必要最低限の荷物を大きめのリュックサックに入れていく。財布、2、3日分の服と携帯式の充電器(流石に携帯が使えなくなるのは避けたい)、最低限の化粧品ぐらいか。彼に比べると大荷物だが、経験がないため何が普通かわからない。それでも最悪現地調達だ!と思い切って本当に、本っ当に自分の中の最低限に納めた。たった一つのリュックを手に旅をして帰ってきた娘の話を両親はどう思うだろう。きっと心配するだろうな。でもそれ以上に私の話を楽しんで聞いてくれそうだ。今夜はぐっすり寝て明日早く出よう。とりあえず本州まで行こうか、美味しいものでも食べながら。そんな想像をして、遠足前の小学生のようにワクワクしながら眠りについた。

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旅の音 雪野蜜柑 @yuki_mikan

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