第4話
「あのっ…いえ、私は…その…」
ナビゲーションされてあなたの元へ辿り着きましたぁ~! なんて言えるわけないっ! どうすりゃいいのっ? ナビ~!
「瑠香~、どした~?」
その時、後ろから男の声がした。
「真宙~! なんか変な女が来てる~!」
変な女…。私がですか? 私だって好きでこんなとこ来てるんじゃないよ! 後ろから女の彼氏らしき男がやってきた。上半身裸でスウェットのズボンだけ履いて、さっきまで寝てましたと言わんばかりに髪はぼさぼさ。とりあえずかけた眼鏡は曲がっている。
「どちら様ですか?」
男は私に尋ねた。尋ねられても何も答えられない。来なければよかった…。あ、そうだ! 部屋を間違えたことにして逃げよう! 我ながらいい案を思いついたと思ったその時、男は思いがけない事を言った。
「坂井?」
え? 何故? 確かに私の苗字は坂井だが、何故お前がそれを知っている?
「坂井絵美香だろ?」
私は怖くなって鳥肌がたった。
「俺、桜井だよ! 桜井真宙!」
「真宙~!!!!」
「そうそう! 中学までずっと一緒だった真宙だよ!」
驚いた! 確かに真宙は中学まで一緒で仲も良かったけど、あの頃の真宙はチビでどちらかと言えば冴えない感じの男の子だった。それが何なのだ、この変身ぶりは! 確かに起き抜けでお洒落はしていないが、それでも漂ってくるいい男感! 背も信じられないくらい伸びている! 顔はもともと悪く無い方だったから、いい男になる素質はあったかもしれない! しかしこの変貌ぶり! 都会へ出て洗練されたのかっ? 体を鍛えて自分を磨き上げたのかっ? 男の成長恐るべし!
「うっわー! 久しぶり~! 元気だった~?」
「うんうん! …でも何でおまえここに?」
真宙が私と仲良さげに話していると、彼女が不機嫌そうに言った。
「ちょっと真宙、誰、この女…」
「あー、同級生。」
「同級生が何でここに来るのよ?」
「ん~、坂井~、何で?」
真宙は私に振ってきた。
「いや、その…何でって…私の方が聞きたいというか…いや…」
「さては真宙、私に内緒で浮気でもしてたんじゃない?」
真宙の彼女がキレた。
「してないよ。」
「ざっけんじゃないわよ! 私、帰る!」
彼女は奥へ行って服を着るとバッグを持ってまた玄関にやって来た。高いヒールの靴を履き終えるなり、私の肩にわざとぶつかってギロリと睨んで去っていった。
「瑠香~! 後で連絡するわ~!」
真宙は去っていく彼女に言った。
「追っかけなくていいの?」
私は恐る恐る聞いた。
「追っかけるもん? やっぱ。」
真宙はまだ眠いのか、目を擦りながら言った。
「普通はこの状態だと誤解されるよね…」
「そっか…。ま、とりあえず俺、コーヒー飲みたい。坂井も飲む?」
そう言うと、真宙は奥へ引っ込んで行った。ドアは開けっ放しだし、このまま帰るのもどうかと思うので、とりあえずコーヒーだけご馳走になろう。私はこの状況に違和感を覚えながらも真宙の部屋へお邪魔した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます