第二話 魔王様とお仕事#4
「一つ摘んでは飯のため……二つ摘んでも飯のため……三つ摘んだって飯のため……」
見渡す限り続く広い草原。
頬を撫でるようにそよぐ風。
遠くから聞こえてくる鳥の囀り。
「四つ摘んでは宿のため……」
あ、変わった。
そんな牧歌的風景の中、どこか死んだ目で呟きながら目前の草をむしるアイカさん。
そう。わたし達はこの草原で、薬草納品のクエストを片付けているのだった。
そしてなんでこんなことになっているのかと言うと――話は数日前、ギルドにゴブリンの件を報告したあの日に遡る。
「というわけで、余は探索者になるぞ。早々に手続きを進めるが良い」
ギルドマスターとの話を終え、わたしが報告書を提出し、二人揃って階下におりた後、スタスタとカウンターに近づいたアイカさんは高らかにそう告げた。
「は? 何だって?」
それまで何かの書類に書き込みをしていたトーマスさんが、ゴオッという効果音でも聞こえそうな勢いで顔を上げる。
「なんか今、こちらのお嬢さんが探索者になるなんて空耳が聞こえたのだが……」
ポカンとした表情でトーマスさんが聞き返す。そのトーマスさんに、アイカさんはビシっと指を突きつけた。
うん。人を無闇に指差したら駄目だって後で言っておこう。
「聞こえておるならさっさと手続きを進めよ。あの変態のお墨付きだぞ」
「マジかよ……」
冗談だろ? と言いたそうな表情でこちらを見るトーマスさん。
まぁ、言いたいことはわかるんだけど。
「えーっと……詳しいことは知りませんが、そういうことらしいですよ」
わたしに聞かれても困る。何の説明も受けてないのはわたしも同じだし。
多分ギルドマスターとの間で何かの取引があったのだろうと想像はつくけど、その内容までは知らないし聞かれても困る。
「マジかよ」
わたしの返事を聞いたトーマスさんは右手で顔を覆いつつ天井を仰ぎ見た。
「あのギルマス。またロクでもないことを……」
あー……カウンター業務というだけでも苦労してそうなのに、更にギルドマスターの無茶振りにも応えなければならないってのだから、その心労は想像するだけでも……ぶるぶる。
「くそっ! どちらにせよあの変た――ギルマスが許可を出したのなら、こちらは従うしかねぇ」
そう言いながら乱暴に机の引き出しを漁り、探索者登録の為の書類を引っ張り出す。
「手続きと言っても、この登録書類にサインをするだけだ。本当は権利と義務について講習があるんだが……こちらも暇じゃねぇ、それはエターナル・カッパーにでも聞いておけ」
本来の手順で言えば、まず探索者講習――実際には常識教育のようなものだ――を受けることになる。
なにしろ探索者希望者はピンキリだ。最低でも探索者としての常識を叩き込まなければ安心できない。
それが終わった後で書類にサインをし、引き換えにプレートを得る。
「ふむ。想像していたよりは簡単なのだな」
「探索者志望なんて、殆どは学も教養も無いチンピラ一歩手前の連中だ。形式張った手順を用意したところで半分も理解できんさ」
どこか投げやりにトーマスさんが言う。
窓口カウンターという一番苦労するであろうポジションだけに、その言葉は深みがある。
「それより、こちらの文字は大丈夫なのか? 一々翻訳が必要なんて勘弁してくれよ」
会話は出来ても筆記は出来ないなんて例は人族の間ですら珍しくはないから、魔族であるアイカさんに確認するのは当然だ。
「安心するが良い。人族の文字ぐらい習得済みだ」
意外と器用に羽ペンを動かしながら、アイカさんは達筆なサインをする。
「ならいいけどよ」
別の戸棚から木で出来たプレートを取り出す。
「今からこいつにお前さんの名前を彫り込む。それが終わったら、その瞬間からお前さんも探索者だ」
しかしそれはアイカさんのお気に召さなかったらしい。
ぷぅっと頬を膨らませる。
「やっぱり『木』からなのか? ほれ、こうなんというか担当者の裁量とかな?」
「勝手にそんなことが出来るワケないだろうが……こちとらしがない受付係だぞ?」
猫なで声なアイカさんの言葉を、トーマスさんが一蹴する。
「ふぅ……頼りにならんのだな」
はー、やれやれ。とでも言いたげにアイカさんは肩を竦めた。
「お前さんなぁ……」
その言葉にトーマスさんが盛大に溜息を漏らす。
あー。なんとなく今まで以上のシンパシーをトーマスさんに感じてしまう。
「おぅおぅ、魔族の姉ちゃんよぉ」
トーマスさんがなにか言うよりも先に、今度は後ろから別の声がかけられる。
「さっきから聞いてれば、随分と都合のいいことばかり言ってるじゃねぇか」
「む?」
わたしとアイカさんは、そろって言葉の方に顔を向けた。
「新入りなら、新入りらしく振る舞ったらどうなんだ? えぇ?」
いかにもと言った感じの大男探索者が、足音も荒くこちらに近づい来ていた。
傷だらけの金属製胸鎧と背中に背負ったバスタードソードがガチャガチャと威嚇的な金属音を立てている。
酒場の方でちょくちょく姿を見た覚えはあった。
確か『鉄』ランクのベテランパーティーの一員で、名前は……ガルカさん、だったような?
「それともなんだ? 礼儀ってモンを教えて欲しいのか?」
「ふむ……」
言われた方のアイカさんは、その大男を上から下まで見回したあと、がっかりしたように口を開く。
「……あまり期待できぬようだな」
「なっ!?」
予想もしていなかったであろうアイカさんの返事に、ガルカさんの顔が一気に真っ赤になる。
「て、テメェ……!」
怒りで身体をプルプル震わせ、背中の剣の柄に手を掛けている。
流石にそのまま抜き放つほど理性を失ってはいないみたいで、少しだけ安心する。
「吐いた唾は飲み込めねぇぞ。覚悟は出来てるんだろうなぁ!」
「喝っ!」
男の声が終わると同時に、アイカさんは一声吠え、右足で床をドンと踏み鳴らす。
「……んぁ」
まるで腰でも抜けたかのようにガルカさんがヘナヘナと床にへたり込む。
「クソッ……、なんだ! 腰が立たねぇ……」
必死で身体を動かそうと足掻くガルカさん。だけど傍から見限り、生まれたばかりの子馬が一生懸命立とうとしている姿にしか見えない。
「畜生! なにをしやがった!」
「よいぞ、お主」
身体はともかく威勢だけは失わない、そんなガルカさんにアイカさんはニッコリと微笑んだ。
「余の一喝を受けてなお威勢を保てるとは、意外とやるではないか」
多分、アイカさん的には褒めているんだろうなぁ……。それも表情とか見るに上級レベルで。
「んだとぉ……」
もちろん、それが相手に伝わる筈もないけれど。
それにそろそろ効果が抜けてきたのか、片膝付きとはいえ立ち上がろうとしている。
「ギルド内で騒ぎを起こすのはご法度だ。知らなかったとは言わさねぇぞ」
「チッ……」
ガルカさんが舌打ちする。
酔った勢いでのじゃれ合いぐらいならともかく、ギルド内での暴力沙汰はその理由に関わらず禁止だ。
最低でも罰金刑だし悪くすればランクダウン、最悪探索者としての資格剥奪さえあり得る重罪。
「余は知ら……ふが」
慌ててアイカさんの口を塞ぐ。
確かにまだなにも説明していない(というかそもそもまだ探索者資格の発行も終わってないケド)ので、知らないというのは当然。
ただこの状況でそれを言っても話がややこしくなるだけだし、こちらにお鉢が回ってこない限りは黙っておくのが吉。
でもその……公共施設では暴れてはいけないというのは説明が必要なことなのだろうか?
「今のは、アレだ。先輩が新入りを少しからかっただけじゃねぇか。そう大事にするような話じゃねぇだろ」
そこまで言うと、ガルカさんはようやく自由になった足でいそいそと受付から離れてゆく。
「えぇい! この!」
口を抑えていたわたしの手を振りほどき、アイカさんが抗議の声を上げる。
「先輩風を吹かすなら、せめて余に実力を見せてからだな!」
「あぁ、もういい。こっちも暇じゃねぇんだ!」
あ。ついにトーマスさんがキレた。
「さっさとコイツを受け取ってあっちに行け」
そう言いながら、探索者ランク・プレートを乱暴にテーブルの上に叩きつける。
「ふむ。ようやく納得したようだな」
テーブル上のプレートを上機嫌で拾い上げたアイカさんの表情が、不本意なそれに変わる。
「……なんじゃ、結局『木』ではないか」
「最初からそう言っているだろう! それに文句があるってのなら」
ビキビキと音が聞こえそうな勢いでこめかみに力を入れるトーマスさん。
「お前さんが言うところの担当者裁量で、探索者登録を断固拒否する」
「……仕方あるまい」
強いトーマスさんの言葉に、流石のアイカさんも一歩引くことにしたみたい。
プレートを鎖で首から下げつつ言葉を続ける。
「余は寛大であるからな。まずは『木』クラスで納得しておこう」
「おかしいだろ」
右人差し指で机の上をトントンと叩きながらトーマスさんがぼやく。
「なんでこちらが譲歩されたみたいになってるんだ?」
もちろんアイカさんはそんなボヤキを聞いてはいない。完全に無視して言葉を続けた。
「あと、余はエリザとパーティーとか言うモノを組む。手続きが必要なら、それも頼むぞ」
「はぁ? エターナル・カッパーとパーティーだ?」
その言葉に、トーマスさんが驚きの表情を浮かべる。
「こう言ってはなんだが……お前さんが魔族だという事情を差し引いても、もっと他に入れるパーティーがあると思うが?」
確かに。
アイカさんは手続き上、最低ランクの『木』からスタートだが、その実力は余裕で『鉄』以上だ。
ゴブリンとの戦闘を考えれば、『銀』や『金』ランクすらも狙える。
あの一件が明らかになれば、アイカさんが魔族であっても引く手あまた間違いなしだと思う。一流どころのパーティーがスカウトに押しかけて来る様子が容易に思い浮かぶ。
それに対して、わたしと来たら……うぅ……泣けてきた。
「余の言葉が聞こえなかったのか?」
一方その言葉を耳にしたアイカさんは、途端に不機嫌そうな声に変わる。
「もう一度だけ言う。余はエリザとパーティーを組む。必要な手続きがあるならば、可及的速やかにそれを成せ」
「……手続きって言うほど面倒なことがあるワケじゃない」
はぁ。と大きくため息をついてから、トーマスさんが別の台帳を取り出す。
「パーティーのメンバーとしてここに記名するだけだ。パーティー名があるならここに書け。まだ決まってないなら空白で良い。決まってから言え」
指差された場所にわたしとアイカさんの名前を書き込む。パーティー名はもちろん空欄。
アイカさんと相談して今決めても良いのだけど……『アイカ様と愉快な仲間たち』とか言い出しそうな気がするのでまたの機会ということにしておく。
わたしはアイカさんの実力は信じているけれど、常識は信用していないのだ。
あと、なぜか代表がわたしという事になっているのだけど……まぁ、こちらの事をよく知らないアイカさんに代表を任せるのは無理かな。
「それとだ」
台帳に名前をサインしてから、アイカさんがトーマスさんの方に顔を向ける。
「そちらにも流儀というものはあろうが……」
言葉と同時に身体全体から発せられる圧力が強まり、室内の温度が下がったような錯覚さえ感じる。
「今後、余の前でエリザに対して『エターナル・カッパー』なる呼称を用いることは許さぬ」
にっこりと微笑むアイカさん。一方、トーマスさんの方はわたしが見たこともない脂汗の表情を浮かべている。
その、心遣いは嬉しいのだけど、わたし自身はあまり気にしてないし、そもそも事実だし。
「あぁ……そうだな。もうパーティなんだし、ソロ時代のあだ名で呼ぶのも変な話だ」
幾分気圧されたようにトーマスさんは頷いた。
「というわけで、エリザとアイカ。お前さん達はたった今からパーティーだ。ギルドはお前たちの貢献を期待している」
お決まりの言葉を口にして、トーマスさんはパタンと台帳を閉じた。
「もう……あまりトーマスさんを困らせないでください」
諸々の手続きを終え、カウンターから離れてから、わたしはアイカさんに言う。
「わたしのいない場所でどんな話があったのかは知りませんけど、だいぶ無茶が過ぎているんじゃないですか?」
「無茶なのはそのとおりだが……困る? あやつが?」
アイカさんはフンと鼻を鳴らす。
「よいか、エリザ。あれは戸惑っておるだけだ」
「戸惑い?」
「今までの最適解が通じぬ相手に、どう対処して良いのか解らずにな」
よくわからない。
そりゃ魔族ってのはそうそうお目にかかれる相手じゃないけれど、それぐらいで動揺してたらカウンター業務なんて務まらないような気がする。
いや、気がするだけで、実際の所がどうなのかは知らないけど。
「ベテランを気取っておるが、まだまだ若造だな。クックックッ……今後も精進することだ」
よほど何か溜まっていたのか、心底楽しそうに笑うアイカさん。
あの熟練カウンター係のトーマスさんが戸惑うねぇ……。
* * *
「草が七本……草が八本……草が九本……」
黙々と薬草を探すわたしの横から聞こえる声。
うん。だんだん怖くなってきた。
「えーっと……」
その怖い動きで真面目に草をむしってくれているのはよいのだけど、一つ致命的な問題が。
そして、その事実はアイカさんを酷く傷つけるだろう。
――だけど目を背けてはいられない。事実はいずれ、告げられなければならないのだから。
「あの、アイカさん」
心を鬼にして口を開く。
「それ、文字通り雑草なので納品には使えませんよ?」
「ほへ?」
死んだ目のまま、アイカさんがこちらに視線を向ける。
「まことにか?」
「えぇ、その、まぁ……ハイ」
心がズキズキと痛むけど、ここは心を鬼にするしかない。
なぜならわたし達は探索者であり、プロなのだから――プロの仕事に妥協は許されない。
「あと、折角摘んでくれた薬草ですけど」
「まだあるのか?」
ハイライトの失われた死んだ目が、更に色を失ってゆく。
「薬草の薬効成分って根本の方にあるんですよね……ですから、もう少し丁寧に深く抜いてくれないと使い物に……」
アイカさんが集めてくれた薬草の大半は根本より上から千切られており、一番効果のある根本部分が含まれていない。
これでも薬草として使えなくはないけれど、買取価格はだいぶ安くなってしまう。
出発前に一応注意しておいたのだけど、多分聞いて無かったんだろうなぁ……。
「うがー!!!」
あ。ついにキレた。
「こんなチマチマとチマチマと……むがーっ!」
頭を掻きむしるアイカさん。
「この程度の仕事、わざわざ探索者を使う必要があるのか? 探索者というのは、こう……」
「必要があるから依頼が出てるんですよ……ここいらの草原はそれなりに安全ですけど、はぐれ魔物や魔獣が出現することだってあるんです」
言うまでもなく薬草には傷を治す効果がある。それは別に人族にのみ効果がある訳ではない。魔族にだって効果はあるし、魔物にだって当然効く。
そのため、縄張り争い等で傷を追った魔物が薬草を求めてさまよい出てくることもある。
そんな場所で薬草採取なんて、危険が大きすぎて素人に任せることなんて出来ない。
「では、アレだ」
アイカさんが元気を取り戻す。
「余はそんな危険が起きぬようこの辺りの魔物を狩りまくるので、お主が薬草を集めるというのでどうだ?」
どうだ、名案だろ。エヘン! とばかりに胸をそらして見せるアイカさん。
「駄目です」
取り敢えずアイカさんのアイデアを却下。
「なぜだ!? 適材適所は、集団作業の極意であろう!」
うん……それは確かにそうなんだけど……そのアイデアには致命的な問題があったり。
「少しぐらいの魔物なら狩っちゃっても良いんですけどね」
そう。例えば遭遇してしまった魔物を自衛目的で倒してしまうのは問題ない。
問題なのは――。
「スタンピード」
「ん?」
わたしの言葉にアイカさんが首を傾げる。
「魔物の暴走現象、であったか? それがどうかしたのか?」
「スタンピードは、短期間で多くの魔物が討伐されると発生することがあるんです」
スタンピードが発生するケースは幾つかあるが、その起点となるのはたった一つ。
魔物が一箇所に集まること。
集まる原因も色々あるけれど、一番わかり易いのは、身近に驚異が迫った時――つまり多くの魔物が殺された時だ。
自分たちの手に負えない驚異が発生したとなったら、普段は単体で行動している魔物たちまで自衛目的で集まり始める。
そしてある程度数が揃えば、その驚異を排除するため一斉に行動を起こし暴れ始めちゃう。
「であれば、そのスタンピードごと余が焼き払えば良いであろう!」
「……土地そのものは領主財産ですよ? 前回の件もありますし、あまりこう派手にやってると手に負えない問題に発展するかも」
「ぐぬぬぬぬ……」
歯ぎしりするアイカさん。
ギルドに所属し探索者となった以上は自由気ままに振る舞うにも節度というのが求められるのだ。
「わかった……わかった……」
諦めたようにアイカさんが肩を落とす。
まぁ……うん。アイカさんに向いた仕事でないのは確か。
とはいえ、ここで甘い顔をしては駄目。アイカさんを最低でも『銅』ランクまで上げるのは急務だから。
探索者が受けられる仕事は、パーティーで一番ランクの高い探索者が基準になるのだけど、極めて危険度が高い討伐系の任務は一人でも『木』ランクがいる場合は受けられない。
だからこれはアイカさんの為にも必要なのだ。
「このような些事。適当な所で終わらせ街まで戻ろうではないか……必要であることは理解するが、こう、なぁ……」
「そんなこと言っても、この仕事。量をこなさないと今日の稼ぎは殆ど無いですよ?」
それに、より身近な問題もあったり。
薬草採取そのものはその辺の子供でこなせる程度の仕事。知識すら必要なく経験則で充分。
当然、仕事単価は非常に安い。とにかく安い。もう本当に安い。
一本辺りで換算したら、パンどころか屋台の串一本すら買えない。
まともな値段になるのは、数十本単位で集めてからだ。
知識も経験も無かった駆け出しの頃は、そりゃぁ苦労したもので……うぅ、思い出したら泣けてきた。
「余の採取分がモノにならないという点を考慮するにしても、その数で金にならぬというのも難儀な話よの」
うんざりするアイカさんの気持ちもよく分かるんだよね。
誰でもできる仕事ってのは、逆に言えば本当に割に合わない仕事ってことでもあるから、本当に人気がない。
クエストボードの常連筆頭は伊達じゃない。
ただ同時に需要が尽きることの無い仕事でもあるから、仕事としては常に存在している。
ランクアップ用のポイント稼ぎとしては、実に狙い目だ。
とは言え、当の本人のモチベーションがこれでは、効率もなにもあったもんじゃない。
「わかりました、わかりました」
はぁ……。たまには飴も必要、か。
「次は討伐のお仕事にしましょう」
「む。まことにか?」
それまでの死んだ目から一転して、アイカさんの瞳が輝きを取り戻す。
「俄然やる気が出てきたぞ!」
その後のアイカさんはそれまでの気乗りしない様子から一転、ベテランのわたしでも舌を巻くような勢いで薬草を集めて来たのであった。
余談だけど、その日の薬草収集量はギルド最高記録を達成したと言うことを記しておく。
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