第5話 命が終わる

彼女は僕がカウンセリングしてから一週間後に死んだ。自殺だった。それが彼女にとって、あるいや僕、彼女の家族全体にとって正しいことだったのかは分からない。しかし彼女が死んだことで、おそらく多くの人はほっとしたのだと思うし、少なくとも僕にはそう見えた。何より、彼女自身は自分が死ぬことについて受け入れていた。それは前向きでもなければ後ろ向きでもなかった。ただ、これで良かったのだと思っていたし、僕はそのことについて何もいう権利は無かった。彼女が死ぬことで、彼女が癒されたのだろうか。それは誰にも分からない。仮に判定するとしたらそれは彼女にしかできないし、彼女以外がどうこう言う問題ではない。葬式は開かれなかった。どの墓に彼女の骨があるのかも僕は知らない。悲しいのかと言われるとまだ答えは出せないが、彼女は時折とても楽しそうな表情を見せたことはもちろんあるし、それを思い出すと当然僕の気持ちは辛くなった。彼女の問題は明らかに僕の問題そのものだったし、彼女のカウンセリングが進むにつれて、僕はより深い場所に行かざるを得なかった。そして色んなものを失った。なにより、彼女本人を僕は失った。死後の世界があるだろうか?それは僕にも彼女にも分からないことだ。彼女が僕の心に消えない烙印を残したとしたら、僕は彼女をカウンセリングするための能力、経験、器が欠如していたことの罪だった。僕があの事件よりも後に彼女と出会っていれば、間違いなく僕は彼女を失わずに済んだ。そう。もう一つ僕の心を深く傷つけたのは、僕は本当はどうすれば彼女を失わずに済んだのかを知っていたはずなのに、それに従わなかったことだ。僕は彼女が治癒していることを願い、おそらく僕が一生治癒しないことも知っているのだ。

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