第205話 熊笹に残雪のせて峠道
里にはとっくに春がやって来ているのに、ショートカットで抜ける峠にはまだ冬の名残が居座っていて、急な斜面を這う熊笹の葉には、雪のかけらまで見えます。
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この季節に実家へ向かうときの風景を、ハルエは何十年も見て来ましたが、父母亡きあと代が変わってからは、自分の立場を思って、自然に足が遠のいています。
さびしいといえばさびしいですけど、無常はうつしよの常であるからして……。
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