第165話 げんげ野を征きたる馬の鎮魂碑

 

 

 

 

 昨今はほとんど見かけなくなりましたが、それでも、早春になると一面に薄桃色の花を咲かせている田んぼがあり、広大な安曇野の風物詩の一景となっています。


 通学中のコウタは、いまは亡き祖母から読んでもらった絵本を思い出しました。

 

 

                 🐎

 

 

 それは太平洋戦争のとき、軍馬として狩り出された農耕馬の悲しい出征の物語。


 農家の一員として同じ屋根の下に寝起きし、みんなに愛されていた母馬が、国の命令で、生まれて間もない仔馬を残し、南の戦地へ送られることになったのです。


 二度と帰らない母馬のあとを追って懸命に走る仔馬の無邪気なすがたが、大好きな祖母のやさしい声とともに、コウタの脳裡にあざやかによみがえって来ました。


 でも、通学路の「出征軍馬之碑」の意味を知るのはもう少し先になるでしょう。

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