第142話 草氷柱削りて清き水流る


 

 

 

 小川を流れる水は澄みきっていて。真綿のような雲を浮かべる空よりずっと深い群青色で。零下10度まで下がった朝の余韻を、両岸から垂れさがった草の氷柱に残していて。その透明な数珠に冬の陽光が反射して、ビーズの飾りみたいで……。


 好奇心の旺盛な犬は、しっとりと濡れた黒い鼻先で氷柱の先に触れてみては、「冷たいね!」というようにケイコの顔を見上げ、またトコトコ歩いて行き……。

 

 

                🐕

 

 

 犬もケイコも若かったころの情景を温めながら、ひとりで散歩するケイコです。


 なお「草氷柱くさつらら」という詩的な言葉は、俳句の先輩から教えていただきました。

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