第132話 表札に八つの名前福寿草

 

 

 

 

 いわゆる二世帯住宅というのでしょうか、左右対称の大きめの二階家の表札に、ずらずらずらっと名前が並んでいるのを見たカナエは、思わず目を泳がせました。


 夫婦世帯か独居が多い昨今にはとても珍しい光景ですし、少子高齢化に貢献していると言えば言えなくもなさそう。お嫁さんが苦労しがちとはよく耳にしますが、妻の両親との同居かもしれず、いずれにしても仲良く暮らせればいいわけで……。

 

 

                 🏠

 

 

 一方で、マイノリティのカナエは、数の威力にも思いを馳せずにいられません。


 人は2人以上が群れたとき、すなわち塊りになったときから、その存在が脅威になり、当人たちは意識せずとも暴力にもなり得ます。物理的にも心理的にも……。


 なので、社会の末端集団である大家族をめでたいとばかり言っていられない現実を思うと、誇らし気に掲げられた表札に複雑な思いを抱かずにいられないのです。

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