第130話 傘ごとに行く先のあり雪の町
テナントビル2Fのカフェの窓から、スクランブル交差点を見下ろしていると、縦横斜めに色とりどりの傘が行き交い、ミュージカルの一場面を見ているようで。
気温が下がって来たせいか、サラサラした粉雪は傘の上に留まることなく地上に舞い下りて、アスファルトの白線を消して行きます。この分では夜までにけっこうな積雪になり、明日の朝は雪かきを覚悟しなければならないかもしれません。(^_^;)
☔
それにしても……とミノルは思います。
これだけの人たちにそれぞれ帰る家があり、待っている家族がいる。いや、いないかもしれないが、とにもかくにも、冷えた身体を温める建物が用意されている。これは実はすごいことなのではないか、全員が丸裸で生まれて来た人間にとって。
みんな、よくがんばっているよな~、いや、おれも含めてだけど。なんの自覚もなくこの世に放り出され、いやも応もなく「がんばる」しかなくて……。そう考えると、間断なく窓の下を行き交う傘がみな愛しく思われて来るではありませんか。
さあて、おれも帰るとするか。コロナ禍真っ最中の老人施設で働き詰めで、感染予防のため増える一方の作業&気づかいに疲れ果てていたミノルですが、長いこと休みなしの医療現場でクタクタになっている妻と、そんな両親に気をつかっているらしい保育園児の息子のために、パパ特製のキムチ鍋でも作ってやろうかな。🍲
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