第129話 ポケットに手袋のある夜汽車かな
メール句会に投句したケイコの脳裡にあったのは、夜汽車という詩情がしっかり健在だったころ、小旅行の外套のポケットに忍ばせておいた黒い手袋でした。🚃
トレーニングで血流を心がけている現在とちがい、当時は手先の冷えがちだったケイコは、一対の手袋に重い心を預け、降りた先に待ち受けている深刻な場面で、いざとなったらこの手袋が加勢してくれるかも……という気がしていたのです。
🌃
そんな句に、ある先輩俳人の方が「萩原朔太郎の『夜汽車』」の詩を連想した」と選評をくださったのですが、浅学にしてその作品を知らなかったので、さっそく「青空文庫」を開くと、白秋を思わせる男女の秘密な道行きを謳った作品でした。
「しののめちかき汽車の窓より外をながむれば ところもしらぬ山里に さも白く咲きてゐたる をだまきの花」ラストの数行の美しさに惹かれたケイコです。❀
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