第120話 簡単に買はれゆく犬小晦日


 

  

 

 12月30日は、独り暮らしにとってはなんともやるせない日でして。(;´∀`)


 いよいよ明日に迫った大晦日に向け、世間さまはさも忙し気に動いていますが、昨日から会社は休みだし、日頃の消極性が祟ってデートする彼女もいないし、兄貴の家族が押しかけて来てにぎやかだろうなと思うと、実家に帰る気もせずに……。


 アパートの部屋は大掃除のしようがないほど片付いており(むかしの彼女はそういうところがいやだと去って行きました(^_^;))、ほかにすることもないケンタは、読みかけの文庫本を持って、ショッピングモール内のカフェへ出かけました。☕

 

 

                🍃

 

 

 その帰りのことです。屋上の駐車場への通路を歩いて行くと、他のテナントよりひときわまばゆい照明のペットショップがあったので、ちょっと覗いてみますと、図鑑に出てきそうな仔犬や仔猫がそれぞれのケージのなかで無心に遊んでいます。


 とそこへ「同じものを食べていると、こうなります」という見本のように嵩高な3人連れがやって来て、肉づきのいい頬をテラテラ光らせた少年が叫んだのです。

 

 ――あ、ぼく、これがいい!

 

 少年が指さす先にいるのは、フレンチブルドッグというのでしょうか、人工的に改良された鼻のつぶれ具合に何とも言えない愛嬌がある、黒と白のまだらの仔犬。

 

 

                🐶

 

 

 すると、驚いたことには、少年と同じく縦横ともに体格がよく、あきらかに動物性たんぱく質の摂取過剰と思われる両親は、即断即決で購入を決めたのです。(-"-)

 

 その価格、じつに600,000円也!!!!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

 

 あっという間に契約が成立し、大枚(といってもカード)と引き換えに、簡単に「お持ち帰り」となった仔犬の行く末を、大がいくつも付く犬好きなのにアパート住まいの現在は飼えないケンタは、あれやこれやと案じながら見送っていました。

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