第113話 人と居てさびしさ募るブーツかな


 

 

 

 膝カックンというのでしょうか、無防備な相手の膝をうしろから弛ませる悪戯。

 あれに遭ったような、何とも言えない気持ちでした、そのときのリナは。(-"-)


 それまで長いこと目の前の人を信じきり、こちらの内実も包み隠さず打ち明けて来たのに、本当はお腹のなかで嘲笑していたとはまったく気づかなかったのです。

 

 

                 🍃

 

 

 そういえば……遅まきながら「??」と思った場面がいくつもよみがえります。


 あのとき事実に気づいていたら、表面的な世間話で止めておいたのに、何もかもさらけ出してしまって……自分の迂闊さ加減が口悔しくて情けなくてなりません。


 それにしても、いくらなんでも人がわる過ぎやしませんか? 生き馬の目を抜く業界の住人だったころも、これほど歪んだ人格に会った記憶は一度もありません。

 

 

                 👢

 

 

 いまさらながらの事実をあっけらかんと告げる軽率な口に唖然呆然としながら、せめてもの慰めは、今年はじめて着用したブーツの思いがけない温かさでした。


 3年前の購入でいまだに型崩れしない製造元の誠実な仕事に思いを馳せながら、失われた信頼に復元はあり得ないと告げるタイミングを見計らっているリナです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る