第103話 川石の一つに一つ冬の鳥 

 

 

 

 

 南からと西からの2川の合流点には、四季を問わず多彩な水鳥たちが群れ集い、通りがかりの目を楽しませてくれますが、その朝の風景はとくに印象的でした。


 オオバンと思われる少し大ぶりの黒い鳥が、川岸付近に転がる石のひとつひとつにきちんと1羽ずつ座り、いっせいに川の中央部を見詰めて身じろぎもしません。


 まるでだれかに号令をかけられたかのように、ぴたっと静止した光景に、自転車で通りかかったカエデはほうっと息を呑み、生まれついて高い瀬音を子守歌にして来たであろう渡り鳥と留鳥の、人にはうかがい知れない世界に思いを馳せました。

 

 ――鳥には鳥の、人には人の悲しみがあるんだね。

 

 柄にもなくそんな感懐に駆られた体育会系女子高生のカエデは、母ひとり子ひとりの自分が置かれている状況はとりあえず丸ごと受け入れ、大地の温みを知らない水鳥たちには申し訳ないけど、地に足の着いた未来を切り開くしかないなと覚悟を決め、バイト先のコンビニに向けて、力強くペダルを漕ぎ出しました。( ^^) _U~~

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