第103話 川石の一つに一つ冬の鳥
南からと西からの2川の合流点には、四季を問わず多彩な水鳥たちが群れ集い、通りがかりの目を楽しませてくれますが、その朝の風景はとくに印象的でした。
オオバンと思われる少し大ぶりの黒い鳥が、川岸付近に転がる石のひとつひとつにきちんと1羽ずつ座り、いっせいに川の中央部を見詰めて身じろぎもしません。
まるでだれかに号令をかけられたかのように、ぴたっと静止した光景に、自転車で通りかかったカエデはほうっと息を呑み、生まれついて高い瀬音を子守歌にして来たであろう渡り鳥と留鳥の、人にはうかがい知れない世界に思いを馳せました。
――鳥には鳥の、人には人の悲しみがあるんだね。
柄にもなくそんな感懐に駆られた体育会系女子高生のカエデは、母ひとり子ひとりの自分が置かれている状況はとりあえず丸ごと受け入れ、大地の温みを知らない水鳥たちには申し訳ないけど、地に足の着いた未来を切り開くしかないなと覚悟を決め、バイト先のコンビニに向けて、力強くペダルを漕ぎ出しました。( ^^) _U~~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます