第100話 武蔵野の冬天まさを太古より


 

 

 

 

 国立駅の付近は適度な人出で、冬の太陽が惜しみなく差しかけるベンチには品格のあるご老人と大型犬がお行儀よく座っており、友人とカフェで待ち合わせているトウコも少し時間があるので向かいのベンチに座らせてもらうことにしました。🐕


 すっかり葉を落とした並木を振り仰げば、学園都市の空はどこまでも真っ青で、武蔵野のイメージにふさわしい、清浄な風景が眼前に気持ちよく広がっています。

 

 

                ☀

 

 

 これから会う旧知の仕事仲間のことを考えていたトウコは、唐突に思いました。


 ――むかしの自分は、さぞかし、いやなやつだったんだろうな。

 

 たぶん「一所懸命オーラ」全開で、ほら、どいてどいて! こんなにがんばっているんだから、多少のことは見逃してくれてもいいでしょ?! みたいな感じで。


 むかし、同郷の芥川賞作家に「武士が賜った領地=一つ所を命がけで守ったことが語源だから、モノを書くならこちらをつかうべきだよ」と教わってからパソコンにもスマホにも単語登録している「一所懸命」ですが、ひとりよがりを押しつけられる方はたまったもんじゃない、周囲はさぞかし迷惑しただろうな。(;´д`)

 

 

                🏁

 

 

 なので、トウコはむかしの自分が大きらいです。絶対に友だちになりたくないと思うのですが、今日会うのは、そんなやつを受け入れてくれる寛容な友人。(#^.^#)


 ひるがえって、いまの自分はどうかというと「ふつう」。というより、はなから自分自身に関心がありません。いまのトウコの視線の先にあるのは、これから各界で活躍してくれるであろう若い人たち。彼ら彼女らの応援団なら、喜んで買って出てもいいなと思ったりして。もちろん、一所懸命になり過ぎない程度にね。(^_-)-☆

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