第93話 陸奥の出城の旗や虎落笛




 

 

 奥州街道の重要な拠点であり、江戸期には仙台藩の南の守りとなった白石城は、蔵王連峰の山麓、東北本線白石駅から徒歩で5~6分の高台に位置しています。


 現在連載中の長編『野可勢の笛』の取材で同地を訪れたケイコは、片倉家の九曜紋の旗に導かれて、小ぶりな天守を頂く城郭への苔むした石段を上っていました。

 

 

                 🏯

 

 

 ここは江戸時代、仙台藩主・伊達政宗の譜代の家臣で、全国に25,000に及ぶ末社を持つ信濃諏訪大社の禰宜ねぎ大祝おおほうりゆかりの片倉小十郎重長が、大坂夏の陣で敵方の真田信繁から託された3女・阿梅姫を匿い、のちに継室に迎えた城。


 ご公儀(幕府)の人質として長らく江戸屋敷にありながら、自身の病身を思い、正室の座を年若な阿梅姫に譲った、小十郎の妻の哀感も秘められているのです。


 一方、小十郎の主君・伊達政宗の長女・五六八姫いろはひめは、数奇な運命に生まれた家康の6男・松平忠輝との結婚で、これまた悲哀に満ちた生涯を送ることになります。


 物語の主な舞台のひとつに据える予定の出城を発ったケイコは、その足で仙台の本城へ飛び、青葉山麓のミュージアムで貴重な資料に巡り会うことになります。

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