第74話 ひと粒のなみだとなりて枯木星
ちょっと意地っ張りなので、だれにも打ち明けられませんが、悲しみの芥子粒を胸の底に秘めているアリサは、うっかりすると、知らずに目が潤んでいるらしく、
――どうしたの、花粉症? ふふふ、まさかと思うけど、失恋だったりして。
からかわれたりするので、人前では至極ポジティブなタイプを心がけています。
その反動からか、ひとりになると、いきなり嗚咽がこみあげてくることもあり、それはそれで昂ぶった気持ちを鎮めるのに努力を強いられるので、なるべく芥子粒の存在を思い出さないようにしているのですが、そうもいかないときがあり……。
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待っていてくれる人も、待つ人もいない暗い家への帰路、ふと見上げた宵の空に、裸の樹林の、裸の梢のあいだにはさまれ、ひと粒の青い星が瞬いていました。
誘われたように、木枯しにさらされたアリサの頬にも、ぽつんと涙がひと粒。
これ以上はご法度だよ、星だってひとりなんだから、と自分に言い聞かせて。
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