第72話 冬北斗異界史あらばひもとかん
――生物が死ねば土に還るというのは本当だろうか。
持病を抱えるアキラにはもうひとつ納得がいきません。
なにしろ異界からもどって来た人はひとりもいないのですから、あちらの世界が存在するものやらしないものやら、かりに存在するとしたら、こちらの世界の魂が続きとして繋がっているものやらいないものやら、皆目、見当がつかないのです。
柳田國男の『遠野物語』所収のいくつかの生還エピソードは承知していますが、なにしろ色濃い迷信が残っていた古い時代のことですし、しかも著者の体験ではなく、陸奥の奥の村人からの聞き書きですから、どこまで信じられるものやら……。
❄
もしも、こちらの世界の魂の軌跡がそっくりそのまま引き継がれるのだとしたら苦しみは未来永劫につづくことになりますから、そんな怖い話がありましょうか。
それとは別に。
こちらの世界の歴史と同様の歴史があちらの世界でも別途紡がれており、日本史や世界史のような紛争や戦争が絶え間なく起こっているのだとしたら、それはそれでひどく消耗する話なので、巻きこまれるのはぜひともご免こうむりたく。(^_^;)
✬
――やっぱり身体も魂も、きれいさっぱり無に帰するのが一番だよなあ。
それが間もなく還暦を迎えるアキラの希望的結論ということになりましょうか。
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