第71話 通り過ぐ昔の事務所冬すみれ
たまの散歩コースに、白と黒のシンプルにして瀟洒な5階建てビルがあります。
じつは、そのむかし、このビルの2Fの、かなり広いワンフロア―を借りていたことがあり、その時代を思い出すのがいやで、本当は通りたくないのですが……。
事業と個人では扱う金額の桁が違うのはたしかですが、なぜあんなに高額な家賃を支払っていたのか、ランコはそのころの自分の金銭感覚を嘲笑いたくなります。
たしかにお金は動いていましたが、売上をそっくり支払いにまわしていただけ、手もとにはほとんど残らず、巨額な負債の利息を返すための自転車操業で。(;_;)
⚘
――現在のつましい暮らしを思えば、わがことながら夢のようだわ。
中空まで枯葉を舞いあげる風に吹かれながら歩いて行くと、あらら、よく見ないと気づかない道端に、小さな菫が数輪、紫紺の花びらを可憐に咲かせていました。
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