第8話
◇◆◇◆◇◆◇◆
イベント開催の前日までに俺は密かにあることを決意をしていた。
RPGゲームのクリアである。
このゲームは完成度は高いが、正に王道ストーリーであった。おそらく作者は懐古趣味があり、古き良きRPGを自作したかったのだろう。この手の教科書のようなRPGは正直、ネットゲームにはとても多かった。
ただ、どうも進めれば進めるほど、現実とリンクしている気がしてならない。主人公の幼なじみのワタナベや仲間に加わったシライシはストーリーが進めば進むほど、現実の同僚達にそっくりだった。
そして主人公を悩ますハヤシ、ツバキ。
ありえないと思いつつも、ボスである魔王ツバキを倒せば、現実の世界も上手くいく気がする。一種の願掛けと自分に言い聞かせながらも、心の底ではゲームの進行が現実の世界に影響を与えていると本気で思っていた。とにかく、変に悔いを残さないためにも、ゲームをクリアしなければならない。
魔王ツバキは恐ろしく強かった。いったどれだけ体力があるのだろう。何回攻撃しても、いっこうに戦いは終わらなかった。同じ攻撃をされては回復し、自分の残りの体力を気にしながら、根気よくじわじわと攻撃していく。
魔王の攻撃が主人公より早いところがよりクリアを難しくさせていた。
魔王が攻撃してくる周期を計算し、絶妙なタイミングで回復する必要があった。シライシは俺が出す的確な指示に確実に応えてくれた。ワタナベは、スピードはイマイチだったが、主人公よりも体力と攻撃力があった。俺が瀕死になっているときも、代わって魔王を攻撃し続けてくれた。
同じパターンが繰り返され、いよいよバグかな?? と思い始めたところで
バチバチバチバチ
画面が点滅し、「ぐぉぉぉ!」という吹き出しを残し、魔王が消えた。
「世界に平和が戻った」
という何の変哲もないナレーションが流れ、ゲームは終了した。
普通だな。一週間ほど楽めたから良しとしよう。俺は偉そうに批評をしながら、パソコンの電源を落とした。これで明後日に迫ったイベントも上手くいくだろう。何とも言えない達成感が溢れていた。
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