第6話

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「え! 今からですか??」


 朝の九時ぴったりに林さんから電話がかかってきた。嫌な予感の的中である。


「はい、……はい、分かりました。確認してみます。またお電話しますので、、」


 電話を切ると、渡辺が飛んできた。普段はお調子者だが、察しが良い。何だかんだ頼りになる良いやつだ。


「おい。何かあったのか?」


「あぁ。林さんが、例のイベントの期間を延ばしたいそうだ」

「延ばす? 良かったじゃん! コストダウンした分、発注を増やしてくれるってことだろ。なんで困った顔をしているんだよ。お前らしくない」


「いや、延ばすってというか。長くするというか。」

「まさか・・・。」

 

「そうだ。イベントの期間を増やしたいそうだ。しかも後ろにじゃなく、前倒しで。それも一週間も。利益は増えるけど、間に合うかどうか」


「佐久間くん、ちょっと良いかしら?」


 振り返ると椿咲課長が立っていた。


「今、ホノボノ食品の林さんから、私にも電話があったわ。よっぽど通したい依頼のようね。うちにとっても悪い話ではないし。受けたわよ。いいわね?」


 そう言うと、返事も待たずに椿咲課長は去って行った。全く、こちらの苦労も知らないで。


「渡辺、スケジュールの再調整、今日中に終わらすぞ。悪い。手伝ってくれ。頼む」

 

「おう、ここまで来たらとことん付き合うぜ」


 俺たちは、片っ端から仕入れ先に頭を下げ、電話をし、なんとか予定を組み直した。大変な作業ではあったが、幸い、何とかなりそうだった。一つの問題を除いては。


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