第4話
どさ。
渡辺の机の上に大量の資料を置く。笑顔を添えて。
「うわ。なんだよこの量」
「設営会社、照明会社、食器、看板、広告、その他備品の会社のリスト」
「おお、おう。まさかお前、田中さんが使っていた仕入れ先、全部見直そうとしているのか」
「田中さんには悪いけど、今までコスト削減ということを全く気にしていなかったようなんだ。今は俺と二人で人員が増えたし、これくらいはしないとダメだろ」
「だからってこの量!? というか佐久間、よくこんなにリストアップできたな」
「もちろん、でたらめじゃないぜ。信用面や、過去の実績、最低限の条件をクリアしているかはチェック済みだ。あとは、まあ、やる気と根気のローラー方式だな。頼りにしてるぞ、兄弟!」
昨日のお返しに、渡辺の背中に一発おみまいする。
「パーティーに加わったからにはしっかり活躍してもらうぜ」
「パーティー??」
何か言いたげな表情の渡辺を残し、俺は仕事に取りかかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
RPGゲームを進めていく上でパーティー、すなわちチーム構成は重要だ。キャラの動作が固定されている代わりに、キャラの装備や攻撃パターンの組み合わせることで戦いに勝利することができるようになる。プレーヤーの腕の見せ所とも言える。
初めてパーティーに加わったのは、主人公の幼馴染みと名乗るいかにも体力と防御力が強そうな忍耐系のキャラだった。仲間となる登場人物の名前は、自分で決めることができたので、俺は「ワタナベ」と名付けた。こいつには片っ端から敵を倒してもらおう。
早くクリアすることよりは、作者が制作した敵やフィールドを隅々まで網羅する。俺は制作者に敬意を示し、余すことなくゲームを楽しむことに重点を置いている。
怪力忍耐系の渡辺が加わり、前衛部隊が整った。次は、もちろん回復系の人員が必要だ。主人公も回復系の魔法を使うことができたが、威力はあまりない。一つ目のイベントであるカナール町のハヤシさんに会った後、すぐに女の子のキャラクターが加わった。魔力が強く、いかにも回復系のキャラだった。
「勇者さま、私も連れて行ってください。お二人の力になりたいのです」
ベタだが、健気で、ビジュアルも可愛かった。会社でもこんな風に癒やし系キャラが助けてくれれば良いのに。少々気持ち悪い発想だという自覚はあったが、俺はこの女の子のキャラクターに「シライシ」という名前をつけた。現実の事務所にいる女の子の名前だ。話したことはあまりないが、髪型が似ていたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます