第3話
思わず苦笑する。まさかここで林さんが現れるとは。ファンタジーの世界に似つかわしくない名前だな。ユーモアか? と内心突っ込みを入れる。
そろそろこの辺でセーブして中断するか。セーブするためにはいったん町を出て、フィールドに出ないといけないようだ。
イベントを終え、「はじまりの町」を出ようとすると
バシ!
「よお、どうしたんだ、暗い顔して」
主人公の親友と名乗る男が現れた。
「イッテ! お前、挨拶代わりに人を叩くなよ」
主人公が聞いたことのあるセリフを放った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「俺も補佐としてチームに入ることになったから、情報共有よろしくな!」
事務所に響く渡辺の声は、今日も無駄にでかい。
「チームって言っても、今のところ俺一人なんだけど、、、」
「細かいことは気にすんなって! ははははは!」
なんでこいつはこんなに陽気なんだ? 少々呆れながらも資料を渡す。
「まあ、正直に言うと、助かる。これ、林さんに提出した見積もり。実は前回まで使っていた設営会社とは違うところに頼もうかと思ってるんだ。どこか良さそうな所、知らない?」
「・・・」
反応がなく、不審に思って顔を上げると、渡辺は呆けた顔で固まっていた。声だけでなく、図体も無駄にでかいから近くに立っているだけで圧迫感がある。
「おい。渡辺、何アホ面でつっ立ってんだよ。ちゃんと聞いてたか?」
「いや、佐久間が素直に俺に頼るなんて、珍しいからさ。驚いた。どこか具合でも悪いのか?」
「は? 補佐に入ったということはお前の仕事でもあるんだから、当たり前だろ。何言ってんだよ」
そう突っ込みを入れたが、渡辺が面食らうのも、無理はない。俺は今まで、どちらかというと仕事は一人でしたがるタイプだった。他人に説明したり、ミスされたりするのが面倒で、多少きつくても、一人でこなしていた。こうやって補佐をつけられることもあるにはあったが、名前だけ籍を置いてもらって、ほとんど一人ですることが多かった。
ただ、今は、協力して仕事をするのも悪くない、と思った。
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