第2話 抱きつく犬
私の家から歩いて少しの所に川が流れており、その前には50m四方ぐらいの空き地があった。当時は住宅街の中にも、空き地が点在していた。
空き地では虫をつかまえたり、四つ葉のクローバー探しをしたりと、色々やった。川では石を投げて水切りをよくやった。
その日は一人でふらっと空き地に行った。
川の方に歩いていくと、1m位の支柱につながれている白い子犬が見えた。耳は垂れていて、こちらに向かって小躍りするような動きをみせる。
自然と引き寄せられるように、子犬に近づいていった。
子犬は立ち上がり、前足を交差させて私の片足に抱きついた。
喜びあふれて飛びつく犬はよくいるが、抱きつくのは珍しいかもしれない。
私の足を離すまいと抱きつく子犬を見下ろしていると、愛おしい気持ちが湧いてきた。
子犬の横に腰を下ろした。顔を激しくなめてくる。されるがままにしておくと際限なくなめてくる。
子犬としばらくたわむれて、その日は帰った。
犬に触れたことがなかった私にはすべてが新鮮だった。
この白い子犬に「チロ」と名付けた。
子供雑誌に出ていた白い犬の名前をそのまま取った。飼い主が起こしてほしい時間を言うと、その時間通りに起こしてくれる利口な犬と紹介されていた。
ちなみにチロはオスである。
飼い主がつけた本当の名前を知ることはなかった。
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