よみがえったチロ

@keita123

第1話 予期せぬ出会い

 その頃、私は小学5年生の少年だった。


 家を出て少しの所にある坂を上り始めた矢先。

 後ろからどんどんと何かが足に突き当たる。

 振り返ると、白い犬が自分の足に向かって飛び跳ねている。反復横跳びのように右に左に跳ねている。


 私の表情はこわばった。

 お里の近所にいる柴犬に吠えられて以来、犬は苦手だった。


 白い犬はずっとついてくる。

 走って逃げようとは思わなかった。そうすると余計についてくると、どこかで聞いた覚えがあった。


 そのまま200mくらい、犬につつかれながら歩く状態が続いた。


 大通りに出ると、他の小学生も見かけるようになった。

 私はジグザグに歩いて、犬をかわす作戦に出た。これがあたったのか、犬は他の子を後ろからつつき始めた。

 助かった、と思った。


 足を止め、子供をつついている犬を眺める。

 思っていたのより小さい。短い足を使って懸命に飛び跳ねている。耳は垂れている。小さな白い子犬だ。

 後ろに引き連れている時は、もう少し大きな犬をイメージしていた。


 この出来事が、思い出の犬、チロとの最初の出会いだったと自覚したのは、ずいぶん後のことだった。

 出会った場所、この子犬の振る舞いを考えると、チロに間違いないと確信できる。あの小さな体のどこに、休まず飛び跳ねる体力があったのかと思う。







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