気の良いオジー

 タモンの屋敷を出る頃にはすっかり日が暮れていた。

 全くくだらない時間を過ごした。早く妹に会いに行こう。左腕がじんじんと疼く。


 監視員は人狼から交代していた。身体の大きさがルッダの倍以上ある、大鬼である。名をオジーという。一年ほど前に入隊してきた。他の隊員とは違い、銃を持ち歩いていない。

「うーす。今夜も俺が当番だわ。よろしくなー。」

 オジーは気さくに話しかけてくる、珍しい奴だった。さすがに名を覚えた。

 ルッダは話しかけられてチラリと振り向いたが、何も言わない。先を急ぐ。

 返事が無くてもオジーは気分を害した様子もなく、ルッダの隣に並んで歩く。まるで友人同士のように。

 そして、部隊の業績が僅かながら落ちてきていること、それをタモンが気にしてイライラしていることなど、一方的に語りかけてくる。オジーが監視につく時はいつもそうだった。

 他の監視員は遠巻きについてくるだけであるのに、彼だけは同僚と話すように仕事の愚痴語りや世間話をする。

 ルッダが言葉を返すことはあまり無いが、オジーの話に耳を傾け、時に顔を向けて曖昧に頷くことはあった。するとますますオジーは饒舌に話すのだ。


 開拓部隊に所属しているといっても、ルッダには特定の任務を与えられてはいない。

 どこで何をしようと黙認されている。ただし、監視員が交代で張り付いていた。

 監視、といっても、ルッダが本気で逃走しようと思えば、誰も止められはしないだろう。最大限に魔力で強化された肉体の頑強さと俊敏さは、どの種族にもひけをとらない。


 …いや、オジーにだけは、さすがに手こずるかもしれない。大鬼は力が強いだけでなくスピードもある。


 そんなことを考えているうちに、研究所に着いた。

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