お姉ちゃんパワーは強力です
正解が分からない。
詩音の気持ちを裏切りたくはないし、視聴者にとっても見せ場だし、もうどう答えるのが正解かほんとに分からない。
とりあえず、一旦逃げることにしよう。
「姉弟で結婚できるわけないだろ!」
当たり前のことを言っておく。
まあ、ヴァーチャルな世界では近親婚が禁じられていないなんていう話を持ち出されたら知らない。
そもそも法律が存在しないんだし、サーバーのある国の法に従うのが今の普通だ。
しかし、シオンはまだまだ引く気は無いようだ。
「ふ~ん、じゃあ姉弟じゃなきゃ結婚してもいいんだ?」
うわあ、出たよ一番困る仮定の話しでの揶揄い。
シオンはすごい笑顔だ。
撮れ高作りながら自分の聞きたいことも聞いてくるのは、本当に天才じゃないだろうか?
チャット欄も大盛り上がりだ。
誰だよ「あのレイフがタジタジだぞ!」とか「レ畏怖vs姉怨は姉怨に軍配が上がりそうだ!」とか言ってるやつは。
まあ、本人が望んでそうなことで視聴者も望んでいることを言っておくか。
「姉弟じゃなきゃね。たらればの話だけど。」
すまし顔で答えておく。
チャット欄は「ツンデレレイフキター(゜∀゜)ー!」だとか「やべ、レイフが可愛く見えてきた」などといったコメントで盛り上がっていく。
おいそこ、ツンデレイフなんて造語を作るな!
シオンはシオンでニマニマ顔を隠せていない。
スパチャで得た収益で結構な機材を揃えたから、そこら辺のトラッキングも完璧だ。
どんな表情でも正確に反映してくれるのだ。
関係ないことを考え、心を落ち着けているとシオンがニマニマ顔のまま口を開く。
「そっか~そうなんだ~」
なんだその返答に困る反応は!
やめてくれ!
段々居心地が悪くなってくる。
チャット欄もすっかり「尊い!」「姉弟てえてえ」という雰囲気になってきた。
最初に誘導したのは僕だけどさあ、なんでこんな僕だけ居心地悪いんだよ…
「あ~じゃあ、誤解は解けたようだし、これ以上邪魔すると本日の主役に迷惑かかっちゃうからこれくらいにしておくよ。この後の僕の枠でのコラボもあるしね。」
さっさと退散を図る。
こんな場所ほんとに居てられない。
「は~い!レイフ君でした~この後もレイフ君の枠でコラボあるのでみんな見に来てね~」
シオンの声と共にDiscordの通話を切る。
は~なんとか乗りきった。
「久しぶりに疲れを味わった気がするよ全く…」
精神的な疲労をこの身体でも味わうことになるとは思ってもいなかったよ。
シオンにあそこまで主導権を握られるとは思わなかった。
まあ、最初から引っ張り出された時点で大分握られていたって話ではあるんだけど。
「にしても配信慣れしているのかってくらいに上手く話していたな。」
スピーチは良く任されていたのを見ているので話が上手いことはよく知っているが、配信の喋りも上手いとは思わなかった。
ちゃんとリスナーの求めているところを良く押さえている喋りだったし、心配は全くいらなさそうだ。
「僕の枠の方で仕返し出来たらいいんだけどなあ…」
正直勝てる気がしない。
元々詩音に甘い僕は攻勢に出られると様子を覗ってしまうのだ。
そこに一気に畳みかけられるとたちまち崩されてしまう。
さらに、レイフとシオンの関係は姉弟だ。
今回で姉弟の関係の恐ろしさが良く分かってしまった。
どれだけ反論しようが、傍から見ると姉に反発する弟という微笑ましい構図に変換されてしまうのだ。
やりにくいことこの上ない。
構ってほしいとせがんでくるタイプの姉ならあしらいやすいが、シオンは冷静に見極めて的確に突いてくるタイプなので尚やりづらい。
そんなことを考えていると余計に勝てない気がしてくる。
「はあ…」
仲間が増えて嬉しいのに憂鬱なこの気持ちは一体何なのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます