てえてえコラボ
シオンの初配信も無事?に終わり、あと少しで僕の配信でのコラボが始まる。
僕は詩音のPCでくだを巻いていた。
「全く、何てことをしてくれるんだよ…おかげで完全に微笑ましい姉弟関係の出来上がりだよ!」
「え、ダメなの?微笑ましいならむしろ大成功でしょ。」
さっそく詩音にツッコまれる。
正論だよ!正論なんだけど納得いかないんだよ!
確かに、箱として売り出せるように事務所を立ち上げた以上、中のタレント同士が密接な関係で結ばれるのは歓迎すべきことだ。
特にカップリングは上手く受け入れられれば非常に強力な関係性となる。
ブラコンの姉とツンデレ弟の関係性は、カップリングとまではいかなくても近い関係性だ。
VTuber同士のカップリングやそれに近い関係は構築するのがとても難しく、仮に構築できたとしても、ファンに受け入れてもらえるかという部分でも高いハードルがある。
初配信でそれをクリアできてしまったことは、素直に成功と呼ぶべきだろう。
呼ぶべきだろうが…
「なんか納得いかない…」
そう、納得はできないのだ。
なんで僕が絶対勝てないツンデレ弟と言うポジションにされないといけないのだろうか。
圧倒的に不利じゃないか。
僕が何か文句言っても微笑ましいと言われて終わる未来しか見えない。
なんてことだ…
「まあまあ、細かいことは気にしないの!それよりもうすぐコラボでしょ。準備は大丈夫なの?」
詩音が流そうとしてくる。
流石に何も思ってないということはなさそうだが、それにしても細かいことじゃないんだが…
不平顔を隠さずにシオンの質問に答える。
「大丈夫だよ。詩音こそ質問は全部把握した?」
今回の配信はマシュマロで募集した質問に答えるという配信だ。
コラボでは定番のものだろう。
自分たちでは出てこない視聴者ならではの目線での質問を匿名で気軽に募集できるという点で、とても配信に使いやすいのだ。
マシュマロ芸をするVTuberもおり、マシュマロで来た煽りや罵倒とバトルする光景もたまに見られる。
今回は視聴者がシオンの設定や人柄を上手く知れるように、マシュマロを募集するという手段を取ることにした。
これなら上手く視聴者目線で聞きたいことを聞いてくれるようになるだろう。
重大告知もあるという風に触れているので、上手く人も集まってくれるはずだ。
「私の方も大丈夫だよ。」
詩音が準備ができたと伝えてくる。
さあ、そろそろ始めるとしようか。
OBSの方も確認し、配信画面を立ち上げる。
少し憂鬱な気分になりながらオープニングを流していく。
今回のオープニングは少し変えることにした。
いつもなら僕単体が出て来るオープニングだが、シオンも出て来るように変えた。
はじめは普通にお淑やかにしていたシオンだが、急に僕に抱き着いて僕が抵抗するという演出だ。
最初に作ったときはお淑やかなまま終わらせるムービーにしていたが、シオンの配信のおかげでイメージが狂ってしまったので、しぶしぶ中身を変更した。
まあ、その甲斐あってか視聴者のウケは良く、「てえてえ」「最初からてえてえ」というコメントでチャット欄は埋め尽くされている。
オープニングが終わり、イントロムービーを流す。
二つ続きになってしまうが、せっかく作ったのだ。
作り込んだので流しておきたい。
夜の屋敷全体を俯瞰したところから窓に焦点を当て拡大させていく。
窓からはリビングがのぞき込めるようになっており、僕とシオンが部屋着で談笑している姿が見えている。
いつしか、ピントも二人にあったところで僕が話を切り出す。
「さあ、配信始めるけど用意は大丈夫?」
すかさず詩音が元気に返事する。
「うん!レイフ君の可愛さをみんなに伝えるよ!!」
シオンが台本通り読んでくれなくて胃の痛い配信になりそうだよ全く。
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