新人VTuberの初配信に凸してみた
「シオンのやつ、一回通話を切りやがったな…」
通話をかけると切られてしまった。
コメント欄は大騒ぎだ。
まあ初配信で凸をかまされる人なんかいないもんなあ。
ましてやそれをぶった切って、平然と配信を続ける新人VTuberも。
そう、配信に着信音が載ってしまっているので、リスナーには着信があったことが気づかれている。
しかもそれがDiscordの音だということもだ。
シオンはまだVTuber活動を始めて日が浅いので、以前に配信者活動をしていない限りDiscordのフレンドはレイフ以外いないはずなのだ。
視聴者はそれを薄々理解しているため、タイミング的にも着信がレイフからのものだと分かっている。
シオンもそれくらいは理解しているだろう。
計算ができるやつなので、これはエンタメのために一旦切ったと考えた方がよさそうだ。
そんなことを考えていると、シオンがへたくそなごまかし方をし始めた。
これは確定でいいだろうな。
エンタメにするというなら乗っかってやろう。
とりあえず一旦ツイートをしておく。
~
シオンが変なことを話し始めるから通話凸しに行ったら切られた (´・ω・`)
~
ツイートした傍からいいねが付き始める。
みんな僕の挙動を見張っていたんだなと思わず苦笑する。
さあ、ならばエンタメを始めようか。
もう一回通話をかける。
今度はシオンはちゃんと出てくれた。
エンタメにするなら配信もそれっぽくするとしよう。
Discordのテキストチャットの方で断りを入れ、シオンのOBSを使ってレイフを表示させる。
もちろんLive2Dで起動しているので問題なく動かせる。
シオンのPCを乗っ取れるなら勝手に通話じゃなくて乗り込んでもいいんじゃないか?とも思ったが、そこは初配信なのでシオンの好きなようにやらせてあげようと思った。
後ですねられてもしょうがないし。
チャット欄もいよいよか!と盛り上がる中で、シオンが口を開く。
「はーい、レイフ君の話をしていたらレイフ君が来ちゃいました~!初配信だというのにいきなり凸ですよ!困っちゃいますね~。さあ、レイフ君どうしたの?」
結構に煽るなあ…
ほんとに配信者向いてるんじゃないだろうか。
まあいい、こっちも心の準備は終わっている。
「どうしたも何も、いきなりなんてことを喋っているんだ!ちっちゃい頃の話を持ち出さないでくれないか!視聴者のみんなが困るだろ!」
昔の話を持ち出されて困惑する弟という構図を持ち出すことにした。
これなら視聴者も、ブラコンの姉とツンデレの弟という風に見るだろう。
「え~そんなこと言わないでよ、レイフ君。ずっとお姉ちゃん好き~結婚したい!って言ってたのに!あんときのレイフ君可愛かったなあ~」
どうやら向こうも乗っかってくれるようだ。
でもなんか嫌だなこれ。
「だから昔の話はやめてくれ!紛らわしいこと言ってリスナーのみんなが騙されてるからこうやって初配信に凸しなきゃいけない羽目になったんだ!」
正直これは本心だ。
コラボもすぐ後に控えてるからそこで話せるのに、何で今凸しなきゃならないんだ…
ただ、そんな僕の気持ちは知らないとばかりにシオンは畳みかけてくる。
「え~じゃあ、レイフ君は私と結婚したくないの?」
うっ…
これどっちの話だ?
単純に考えるならレイフとシオンの関係の話だろうが、どうにも怜輔と詩音の関係についての話も織り交ぜられている気がする。
いったいどういうつもりなんだ…
どちらにしろ今の僕の状態じゃ結婚なんかできっこないぞ。
本物の僕の方だって抜け殻状態らしいし、どっちの僕と結婚するにしたって結婚式がカオスになる未来しか見えない。
画面越しに私たち結婚しましたという二次元オタクの結婚式か、ひたすら新郎が挙動不審な結婚式のどちらかが出来上がるのだ。
そんな光景、互いの親が認めるとは到底思えない。
じゃあ、僕が元の状態に戻るのを待つのか?と言われてもいつになったら戻れるようになるのかも分からないし、そもそも戻れるのかも分からない。
考えれば考えるほど、疑問が僕の中を渦巻いていく。
詩音、君はどうしたいんだ?
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