初めての会話

 さて、投稿してツイートを行うと、いよいよコラボ配信の時間が迫ってきた。


 コラボでお邪魔しますという告知のツイートもついでにしておく。


 今日はいきなり大物だ。


 どれだけ来てくれるかが、楽しみで仕方がない。




 Discordにログインし、事前のTwitterのやり取りでフレンドになっていた相手に準備できた旨の連絡を送る。


 Discordは、元々ゲーマーのために作られたボイスチャットアプリだ。


 PC版では、ダウンロードせずにブラウザ上だけでも使用することが可能となっている。


 全く想像が付かないよという人は、機能が多いSkypeだと思って欲しい。


 


 Vtuber業にはもう必須のアプリとなっており、Youtuberやニコ生配信者にも多く使用されるアプリであるDiscordの魅力は、何といってもサーバーの設立だ。




 例えばあるVtuberが企画配信を行おうとする。


 企画を思いついた上で、まず最初にやることは主だった仲間を誘って相談することだろう。


 ある程度話して企画をやって問題なさそうだなと感じると、Discordにサーバーを建てる。


 サーバーの名前は『~~企画配信』といった感じだ。




 サーバーの中では、基本的にテキストチャットやボイスチャットでテーマごとの部屋、つまり立ち絵を部屋に貼る部屋だとか、企画の筋立ての議論を行う部屋だとか、主しか書き込めない全体告知用の部屋を作って、議論や周知の内容を整理していく。


 仕事でSlackやMicrosoftのTeamsを使っている人には、ああいった感覚だと言えば伝わるだろうか。


 Discordの場合は、仕事よりも配信やゲームに特化した音質強化や画面共有の部分でVtuberをはじめとする配信者に愛用されている。




 なので基本的に1対1でも通話や企画の議論、雑談が行われるのはDiscordだ。


 Vtuberになって個人勢でDiscordで大勢のフレンドがいるというのは、一つのステータスとなるほどにまで文化の一部として浸透している。


 個人的には、Twitterで暴れまわっている公式アカウントの存在が一番浸透している気がするが…




 そんなことを考えている間に、相手のステータス表示がログイン状態に切り替わった。


 まもなくしてお待たせしましたとメッセージが届き、通話が開始される。


 さあ、初めて人と喋るぞ。


 緊張するなあ…




 「初めまして~英霊ファミリーを取り仕切っているアルクトラです!改めまして、今日はコラボオッケーしていただいてありがとうございます!」




 「初めまして。レイフ・フェイク=リベリオンです。こちらこそお誘いいただけて本当に光栄です。今日はよろしくお願い致します。」




 「はい、こちらこそよろしくお願い致します~」




 そんな定型の挨拶を述べていき、軽い打ち合わせを始めていく。


 打ち合わせの内容はこんなことを聞こうと思っているんですが問題ないですか?といったものだ。


 大体の話の筋も分かっているので、サクサクと打ち合わせが進んでいく。


 準備無しで来てもらって大丈夫ですよと言うのは本当にその通りだった。




 そんな感じで、打ち合わせもすぐ終わり、配信までの間軽く雑談をする。




 「レイフさんは、この後コラボの予定はどれだけ詰まっているんですか?」




 「主だったところで言ったら薩摩鏡水さんと春葉明ボーノさんくらいでしょうか。後はチャンネル登録者数が近い方のお誘いは極力受けていこうかなとは考えています。」




 「あ~個人勢で新人だとあまりにも登録者数がかみ合っていない人からのお誘いとか結構ありそうですもんねえ。昔からこの世界の雰囲気もガラッと変わっちゃいましたから。」




 「結構そんなこともよく言われてますよね。Vtuberの数が急激に増えたこともあるんでしょうけど。昔はTwitterで四天王と名も無い個人勢の絡みがしょっちゅう見られたなんてよく言われますし。」




 「そうですそうです。Discordで裏でお話ししてたり、一緒にゲームしたりなんてことも結構あったんですよ~。今でも当時から親交のあった人とはたまに喋ったりしますけど、昔ほどは薄れちゃいましたねえ。」




 そんなことを喋りながら時間が過ぎていく。


 やはり昔はVtuberってだけで、大物と仲良くなれたっていうのはほんとだったんだなあ。




 「あ、そろそろ時間ですね。配信立ち上げますけど準備は大丈夫ですか?」




 「大丈夫です。」




 「はい、じゃあよろしくお願いします~」




 そうして初めてのコラボ配信が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る